巨額赤字「ジャングリア沖縄」の苦境…改めて問われる「クールジャパン機構」はなぜ「刀」に80億円出資したのか

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「現状のままでは厳しいのではないか」

 費用の面についても、専門家の見方がある。全国のテーマパークを研究する日本遊園地学会の塩地優会長は、朝日新聞の取材に対し、初期投資700億円は大型テーマパークほどではないものの、多くのスタッフを配置しており人件費は大型テーマパーク並みだと感じた、一方で集客規模はそこまでではなく、現状のままでは厳しいのではないか、と述べている。会計の内訳を見なくとも、固定費と集客規模の釣り合いに疑問が呈されていることは押さえておきたい。

 塩地氏の処方は、いま大規模な追加投資をするのは現実的でなく、まずは現在の集客規模に合わせた人員にするなど費用を徹底的に見直して収支を安定させ、そのうえで沖縄の自然や文化を生かした魅力を少しずつ積み上げるべきだ、というものだ。縮小して均衡させる方向である。一方、報じられているつなぎ融資は運転資金であり、収支の構造そのものを変える資金ではない。ここに緊張がある。

 開業1年を機に運営会社が打ち出した方針が「沖縄化」だったことも、この文脈に置くと別の意味を帯びる。沖縄の音楽を採り入れたショー、地元企業と連携した物販、県民の駐車料金無料化。いずれも妥当な施策だろう。だが、沖縄らしさを求める声が多いと1年かけて分かったというのであれば、当初の需要予測が何を前提に組まれていたのかが、あらためて問われることになる。

 もちろん、パークの価値をJEの利益だけで測るわけにもいかない。雇用が生まれ、宿泊や飲食への波及もある。りゅうぎん総研は北部の「素通り観光」に人の流れができたことを評価している。ただし経済波及効果は、JEの利益でも、公庫への返済額でも、自治体の税収でもない。地域にもたらす利益を評価することと、貸した資金を回収できるかを確かめることは、別の作業である。

「沖縄振興」という看板

 ジャングリアは破綻していない。JEHDの評価損173億円が、そのまま税金の損失になったわけでもない。客数を増やして事業を立て直す可能性は残っている。一方、損失と追加融資が報じられた今、当初の計画を繰り返すことに意味はない。

 だが、これまで明らかになったことは重い。事業継続への疑義、資金不足のリスク、当初計画の半分への目標引き下げ、そして沖縄公庫単独による30億円の追加融資。9月25日に行われた株主総会では、会社側の説明が行われた後、配布資料は回収され、森岡氏は総会後の取材に応じなかった。公表されたのは結論だけで、その根拠は明らかにされていない。

 読売新聞によれば、30億円は今月末にもまとまる方針だという。外部が検証する時間は事実上ないが、沖縄公庫からの説明もまだ行われていない。同公庫はこれまで出資と融資にいくら投じ、うちどれだけを回収の危険にさらしているのか。4月の追加融資にあたって、客数や売上の見通しをどう修正したのか。30億円を単独で実行するなら、返済の財源と時期をどう見積もり、当初計画の半分という新しい前提のどこを検証したのか。民間企業の営業秘密や個別の契約条件をすべて公開する必要はない。それでも、政府の資金を使う以上、金額と判断の骨格は説明すべきだ。

 説明を求める相手は公庫だけではない。沖縄公庫は内閣府と財務省の共管であり、出資の実行には主務大臣の認可を要する。政策目的を掲げるのが内閣府、資金の健全性を見るのが財務省、個別の審査を行うのが公庫という分業は、うまくいっているあいだは役割分担だが、失敗したときには責任をなすりあう仕組みにもなる。

 赤字を出したことだけを責めても、沖縄の経済は強くならない。問われるのは、計画が外れたとき、公的資金の出し手が何を根拠に支援を続け、どこで条件を改めるかである。その判断を国民が検証できなければ、「沖縄振興」という看板は、民間の挑戦を支える言葉から、負担の所在を覆い隠すベールに変質してしまうだろう。

 第1回【親会社が「赤字173億円」で“ジャングリア沖縄”の正念場…つなぎ融資「30億円」で“資金不足リスク”は解消できるか…知られざる“半官半民”の特殊な実態】では、ジャングリアの抱える特有の課題について深掘りしている。

篠原 章(しのはらあきら)
批評家。1956年山梨県生まれ。経済学博士(成城大学)。大学教員を経て評論活動に入る。主なフィールドは音楽文化、沖縄、社会経済一般で、著書に『日本ロック雑誌クロニクル』、『沖縄の不都合な真実』(大久保潤との共著)、『外連の島・沖縄』などがある。

デイリー新潮編集部

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