「あっちは部屋で、僕はホテル」46歳不倫夫が悩む“2番手”扱い ある日、彼女のマンションから出てきたのは…

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彼女のマンションから出てきたのは…

 1年たち、少し関係が落ち着いてきたが、馴れ合いはなかった。

「彼女を知れば知るほど、独占欲がわいてしまって。いつも彼女を送っていくので、どこに住んでいるかはわかっていた。あるとき急に行ったら驚くかなと思ったんですよ。彼女のマンション前でタクシーを降りようとしたら、入り口から彼女が出てきた。ひとりじゃなかったんです。車から降りるのをやめて見ていたんですが、次の瞬間、本当にひっくり返りそうになりました。彼女と一緒にいたのは僕たちの上司だったんです」

 菊乃さんは上司の腕をとるようにして歩き始めたが、上司からたしなめられて周りを見渡す。空車のタクシーが通りかかり、上司が停めた。菊乃さんがすがるように上司の腕をとるが、彼はそれをやさしく振り払って乗っていった。

 菊乃さんは見送り、ゆっくりと建物の中に入っていった。

「頭が煮えたぎりました。全身の毛が逆立つのを感じました。そのまま帰ればよかったのに、僕は彼女の部屋に突入してしまったんですよ。チャイムを鳴らすと彼女は上司が戻ってきたと思ったんでしょうか、いきなり『どうしたの』と言いながらドアを開けた。そこに体を滑り込ませました。『誰だと思ったんだよ』と言ったら、彼女が青ざめていくのがわかりました。僕は何も言わずに彼女を押し倒した。生まれて初めて感じた嫉妬でした」

上司の彼女を寝取った?

 彼女を責め立てながら「あいつとオレとどっちがいいんだ」と言い続けた。彼女は全身を波打たせ、涙を流して感じている。その顔が「とてもきれいで、だからこそ悔しくて、全身をぶつけるようにして関係をもった」そうだ。

「その日はそのまま帰りました。怒りと同時に彼女への執着がわいてきて、どうしたらいいかわからなかった」

 翌日、会社で会うと菊乃さんの肌が輝いていた。上司はいつもと変わりない。考えれば、上司の彼女を寝取ったともいえるのかもしれない。上司は部屋に入れるのだから、彼女にとって上司のほうが自分より上なのだろう。

 その日の帰りぎわ、彼は菊乃さんをつかまえた。話し合おうと言うと、彼女は「話すことはないわ」とニヤリと笑った。その笑いが、あまりに狡猾そうだったのにあまりに美しかったから、彼は何も言わずに彼女をホテルへと連れていった。

「どういうことなんだと聞こうとしたんですが、上司のほうが好きだと言われたらどうしようと思い、怯んでしまいました。僕ができるのは体を使って心を責めることだった。そして彼女はどうやらそれが心身ともに快感だったみたいで……」

上司は部屋に入れるのに…

 それからさらに1年たった今、彼女との関係は変わっていない。おそらく上司もまだ彼女とつきあっているのだろう。上司は彼女の部屋に入れるのに、彼は相変わらずホテルだ。

 ただ、それを言い立ててもしかたがない。

「早く彼女への気持ちが冷めればいい。そう願っているのに冷めない。執着は強くなるし、ときどき上司と対決したほうがいいのかもしれないとさえ思うんです。でも上司も僕も既婚。彼女は『あなたには奥さんがいるのだから、これで対等だと思う』と言ったことがある。そう言われればそうかなとも思ってしまったけど、とにかく相手が悪すぎる。メンタルが鍛えられましたけどね」

 一時期ほど頻繁に会ってはいないから、家族との時間は戻ってきている。だが、妻には「あなたはなんだか変わってしまったわ」と言われた。薄々、何か気づいているのかもしれない。頻繁に会わなければそれだけ執着が濃くなることもわかった。彼はひとりで苦しむしかないのだ。

「苦しみすぎて、苦しいのが普通になってきちゃって……。こんなことになるなんて思ってもいなかった。彼女から逃れたい、でも離れてはいたくない。常に気持ちが混乱しているんですよ」

 もう少しの間、この地獄は続きそうだ。だが、きっとそのうち鎮まっていくだろう。それまで誰にもバレないことを祈るしかなかった。

 ***

 菊乃さんへの執着に苦しみながら、家族との時間も取り戻そうとする芳信さん。記事前編では、妻との結婚を決め、3人の子の父になるまでを紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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