真夏のイタリアの大規模断水を笑えない…「当たり前に水が出るニッポン」がもうすぐ終わる可能性

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敷設して50年の水道管が3カ所で破裂

 今年8月、中部イタリアのマルケ州に位置するペーザロで、大規模な断水が発生した。人口が9万5000人ほどのこの都市は、作曲家ジョアキーノ・ロッシーニ(1792-1868)の生地で、毎夏、ロッシーニ・オペラ・フェスティバルが開催され、筆者は仕事半分で通っている。同時にこの都市は大衆的な海浜リゾートでもある。夏のイタリアはローマやミラノのような大都市が閑散とするのに反比例して、こうした都市が大変な賑わいをみせる。

 筆者は8月16日、すなわち観光の最盛期であるフェッラゴースト(聖母被昇天の祝日)の翌日、ペーザロに着いたが、最初の断水はその前夜に起きていた。到着したばかりの筆者は、前日の断水の苦労話を「自分は免れてよかった」と、他人ごとのように聞いていた。その時点では、水は出るようになったという話だったからだ。ところが、ホテルにチェックインすると水が出ない。イタリアは、とくに海浜リゾートではバスタブ付きのホテルが少ないなか、こだわって確保したバスタブがまったく機能しない。それどころかシャワーで汗を流すことさえできず、食後なのに歯も磨けない。トイレも流れず(これは一大事である)、手を洗うこともできない。

 結局、ミネラルウォーターで歯を磨き、手を洗いながらも、汗は流せないまま(ひどい状態のトイレもそのままに)、夜のオペラに出かけ、食事を終えて戻っても、やはり水は出ない。そんな状況だから眠るに眠れず、朝の4時ごろにお湯が少し出はじめたので、「出るうちに」と思ってバスタブに溜めていたら、「下の部屋の人が水の音がうるさいといっているから、すぐ止めろ!」と管理人が飛んでくる始末(夜中に水を流せないホテルなど非常識だが、それは本筋ではない)。お湯はまた出なくなり、断水状態に戻った。

 結局、断水は翌17日の午後まで続いた。調べてみると、2日間にそれぞれ離れた3つの場所で、水道管が連続して破裂していたのだった。7月以降、雨がほとんど降らず、元来が粘土質の土壌が収縮。敷設して約50年が経過している水道管に強い圧力がかかり、前代未聞である3カ所における続けざまの破裂につながったのだそうだ。

 海水浴客がシャワーさえ浴びられない。オペラの指揮者も、オーケストラ奏者も、出演した歌手たちも、大変な汗をかいたはずだが、それを流すこともできない。観光のピークを襲った真夏の断水の恐ろしさを痛感させられたが、これは私たち日本人にとっても、決して他人ごとではない。

すべての水道管を交換するのに140年かかる

 たしかに、イタリアの水道事情は褒められた状況ではない。イタリア国家統計局によると、全国の水道網では2022年、供給された水の42.4%が利用者に届くまでに失われていた。2024年の県庁所在地に限った調査でも、平均35.2%に上る。ミラノなど北部が低めで、南にいくほど漏水率が高い傾向にあるという。とくに南部には財源難の自治体が多いため、水道管の老朽化に対処できていない。イタリアにかぎらず、欧米諸国では漏水率が高めだが、一方、日本の漏水率は全国平均で約5%と、世界で1、2を争うほど低い。

 つまり、現状では日本の水道は世界的にかなり優秀だが、その状態が続くとは考えられないところに、日本が抱える問題がある。太平洋戦争の空襲で焼け野原になった日本では、あらゆるインフラが1950~70年代の高度経済成長期に集中的に整備された。水道管も同様である。全国の水道管の総延長は約72万キロにおよぶが、その多くが、設計上の耐用年数である40年を迎えており、実際、40年を超えた水道管では、漏水や破損などの事故が年間2万件以上も発生している。

 要するに、老朽化した水道管を一斉に交換すべき状況なのだが、そのためには莫大な費用と労力が必要となる。加えて日本の水道は、耐震性を高める必要がある。だが、国土交通省によれば、基幹的な水道管のうち耐震性が確保されているものの割合は、2022年度末の時点で42.3%にすぎない。同時に耐震化を進めるとなると、費用はさらにかさむ。こうした状況なので、すでに更新された水道管の割合は年を追って減少しており、いまのペースで交換を進めても、すべての水道管を交換するのに約140年かかるという。これでは交換作業が老朽化のスピードに追いつかず、永遠のいたちごっこが続くことになる。

 そのうえ日本は、激しい少子化に見舞われている。2025年に国内で生まれた日本人の子供の数は67万1236人だった。これは1899年に統計を取りはじめて以来、もっとも少ない数字だが、ここに至った速度も恐ろしい。2015年の出生数100万5677人から、10年で33%以上も減ってしまったのである。国立社会保障・人口問題研究所が2023年に発表した将来推計人口では、出生数が67万人になるのは2040年と見積もられていた。国の想定よりも15年も速く少子化が進んでいることになり、この勢いでは今後20年もしないで日本の人口は1億人を割り込むかもしれない。

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