マンションに帰ると、妻と恋人が並んで座っていた。「一緒になったらどう?」「時間を返してよ」…火に油を注いだ42歳夫の言い分

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「結論を出したくない」関係

 優里亜さんは結婚が早かったため、当時、子どもたちはすでに15歳と13歳。父や祖母に、母の悪口を吹き込まれていたためか、子どもたちも彼女には懐いていなかった。

「オレを逃げ場にしていたんだろうけど、それでもいいと思っていました。彼女は自己評価が低いんですよ。でも仕事は生き生きとやっていたし、評価も高かった。女として、人間としてもっと自信をもつべきなのに、それを夫や義母が潰していたんでしょうね。夫と話をしたいと言ったんですが、それは優里亜に却下されました。一緒にいる時間があればそれでいい、それで私は救われるんだからって。揉めたくないと言っていましたね」

 結論を出したくない、このままふわふわ漂っていたい。優里亜さんのそんな気持ちを、裕造さんは理解することができた。何も決めずに、何も解決せずに時間だけが流れていった。

「でも優里亜との生活は楽しかった。ふたりで近くの居酒屋に行ったり、一緒にご飯を作ったり。オレが単身で東京にいて、家庭はふるさとにあると知っている人もいたけど、誰にも非難はされなかった。まあ、多くの人はそんなプライベートなことは知らなかったけど」

 近所の居酒屋では「夫婦」と見られていたようだ。常連さんたちとも仲よくなって、みんなでカラオケに行ったりキャンプをしたりもした。それでも彼は、律儀に月に1回はきちんと自宅に帰った。

「夏休みはほとんど故郷で過ごしていました。家族旅行も年に2回はしていた。オレは家族と優里亜、どちらが大事かなんて考えたことがなかったんです。自宅にいるときのオレと、東京で働いているオレは違う。それぞれにパートナーがいる。明確にそう思っていたわけじゃないけど、居場所が変わるとそれにともなってパートナーが変わるのが自然だったんですよね」

 たとえ恋人がいると知っても妻は憤るようなタイプではない。恋人は妻を押しのけるような女じゃない。裕造さんはそう思っていた。

ところが優里亜さんに変化が…「離婚したら結婚してくれる?」

 だが2年ほど前から優里亜さんに変化が出てきた。いっそ離婚しようかしらと言いだしたのだ。きっかけは子どもたちが成人したことだった。

「形だけの家族はもういいよねと夫に言ったら、おまえには何の権利もないと言われたそうですが、子どもたちも優里亜とは話そうとしないし、もうどうせ母として失格なのだからいっそ籍を抜きたいと思ったようです。オレがどうこう言える話ではないから黙っていたら、『離婚したら結婚してくれる?』と言いだした。いや、オレも結婚しているし離婚はしないからと言ったら、彼女は『あなただって、形だけの家族でしょ』と。いや、うちは違うと思うと言うと、彼女が激昂したんですよ。なんだか話が違うというか、彼女の中で、離婚さえすればオレと結婚できると思っていたみたい。オレの家庭はきちんと家族としてつながっているからと言ってしまったんですが、それが彼女を傷つけた」

 何度となくそんなやりとりを重ねたが、相変わらず結論は出ない。オレは優里亜と楽しく生きていたかった、揉めるのは嫌だと言うと、「あなたにあげた私の時間を返してよ」と言われた。そんなことを言う女じゃなかったはずなのに。信じていたものがガラガラと崩れていった。結婚している女性だからこそ、結婚の無意味さを知っているはずだし、婚姻届に縛られない関係をしっかり作れると信じていたのだ。彼は、「私にはあなたしかいないのに」と泣き崩れる優里亜さんを、他人のように見つめていた。そして、知ったこっちゃねえよとつぶやいた。恋愛は五分五分だろ、対等だろと迫った。

 それでも優里亜さんは彼のところにいつづけた。彼はだんだん息苦しくなっていった。週末になると故郷に逃げた。

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