「学校に行かなくていい」だけでは救えない…夏休み明けに増える子供の自殺 その陰に潜む“教育虐待”
「これじゃ人生終わり」の罵倒
A美さんは受験中に母親から「なんでこんな点数なの!」「これじゃ人生終わりよ!」などとくり返し罵倒されたことで自己否定感を膨らまし、中学生になった頃には「自分は生きている価値がない」「低スペックの私は何をしてもムダ」と考えるようになっていた。
その劣等感のせいで、A美さんは友達を作ることができず、部活もすぐにやめてしまった。成績は低迷して教科書を手にすることすら嫌になり、現実逃避としてのめり込んだのがSNSのダイエット動画だった。その影響から、「やせれば、みんなから羨ましがられる存在になれる」と考え、極度のダイエットをつづけて摂食障害になった。
母親はこうしたA美さんの生活に我慢ならなくなり、「中受を失敗したくせに何、能天気なことをやっているの!」「大学受験でリベンジしなさい」と激怒し、同時に二つの塾に通わせた。A美さんはそれでも勉強に興味を持てず、テストの度に母親から大声で怒られる日々がつづいた。
こうした中で、A美さんは心を病んで学校へ行けなくなり、高校1年で中退。フリースクールや、高校中退者専門の塾に通ったものの、まったく勉強が手につかず、高等学校卒業程度認定試験すら受けられなかった。そしてしばらく引きこもった後、19歳で命を絶ったという。
先の精神科医は次のように話す。
「私から見れば、A美さんは教育虐待の犠牲者であり、自死の原因もそこにあります。ただ、A美さんの母親は、『学校で仲間外れにされたせい』『先生の指導が未熟だったせい』と主張したようですし、父親は『本人の心の健康の問題』と考えていたようです。警察もSNSの影響とか、進路の悩みが原因だったと受け止めたはずです。その結果、彼女が受けた教育虐待と自死の関係性は誰にも気づかれないまま片づけられたのです」
「学校に行きたくない」の背景にあるもの
マンガ「教育虐待」で取材した一人に、高校の教員がいる。彼は30年のキャリアの中で3人の生徒の自殺に接した。
この教員はこう話す。
「メディアは8月から9月にかけて、一斉に『つらかったら学校へ行かなくていい』『無理に行って死なないで』などと言います。学校=悪という図式で捉えるんです。
でも、学校がつらいと考える子の中には、そもそも家庭環境が良くなかったとか、親からものすごいプレッシャーをかけられているといった原因もあり、その結果として学校の規則正しい生活になじめずにつらい思いをする、あるいは成績のことで過度に思い悩むといった状態に陥る子も一定数いるのです。
私としては一概に学校批判をするのではなく、そもそもなんでこの子が学校の集団生活や勉強のことで苦しみを抱えるようになったのかを明らかにしなければ、根本の解決にはならないと思っています」
マンガの中でも、一流高校に通いながら、親からのプレッシャーによって、成績低迷を理由に死を選んだ生徒のことを紹介した。この生徒が追い詰められた背景にあるものも、学校というより、家庭にあると言える。
今年もたくさんのメディアが夏休み明けのタイミングで、異口同音に『行かなくていいよ』というメッセージを発している。
もちろん、命を絶つほど辛いなら、学校へ行く必要はない。
だが、それほど学校の生活や学業を苦にする要因は、子供たち一人ひとりの生い立ちの中に潜んでいることもある。
教育虐待がすべてではないが、何がトリガーになって子供がそのような苦痛を抱えているのかを、周りの大人は注意深く考える必要があるだろう。
【相談窓口】
日本いのちの電話連盟
電話:0570-783-556(午前10時~午後10時)
https://www.inochinodenwa.org/
よりそいホットライン(一般社団法人 社会的包摂サポートセンター)
電話 0120-279-338(24時間対応。福島県からは末尾が226)
https://www.since2011.net/yorisoi/
厚生労働省「こころの健康相談統一ダイヤル」やSNS相談
電話0570-064-556(対応時間は自治体により異なる)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/soudan_info.html
いのち支える相談窓口一覧(都道府県・政令指定都市別の相談窓口一覧)
https://jscp.or.jp/soudan/index.html
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