「あなたの子だと思う。産むね」自由すぎる年上の妻とは別居婚…「人妻」「20歳年下」の2人の恋人がいる41歳夫、それでも心が満たされないワケ
突然の「産むね」
そんなとき、育った過去を振り返るまいと思っても、つい思い出してしまうと彼は言った。父親に殴られたこと、母親に信頼されていなかったこと。ある日ふと、「愛されていなかったんだ」と気づいた。
「そんなこと、さっさと気づけよという話なんですが、自覚がなかったんですよ。僕は愛されていなかった、そして愛されたかったんだとやっと気づいた。じゃあ、愛ってなんだという話になるから、ますます混沌としていくんですけどね。普通に愛されて育った人は、そういう疑問にとらわれないと思う。実際、玲香なんて、いつも自由にのびのびやりたいことをしている。彼女は他者に受け入れてもらえないのではないかとか、自分が常に自分の人生の傍観者であるようなモヤモヤ感はないと言ってましたからね。理屈ではわかっても、体と心がうまく反応できない。そういうことの連続でした」
27歳のとき、つかず離れずつきあっていた玲香さんが「妊娠した。あなたの子だと思う。産むね」と突然言った。え、そういう場合って結婚するんじゃないのと、智紀さんは素朴に返した。
「どっちでもいいけどと、玲香は淡々としていました。そもそも、あなたの子だと“思う”というのがすごいですよね。でも玲香に限っては、驚きませんでした。だいぶ彼女に慣れていたんだと思う。子どもの戸籍の父親欄が空欄なのはどうかな、と言ったら、『そんなこと、どうでもいいわよ。私の子であることに変わりはない』と。自由すぎてちょっとついていけない気もしたけど、それが彼女の人生観だから認めざるを得ない。僕は結婚については及び腰でしたけど、もし玲香が結婚するというなら、それもいいかもとは思いました」
恵理ママは、「ふたりで考えて」とあえて意見を言わない。ふたりはいろいろ話し合った。その結果、「お互いに自由に生きる権利は放棄しない。だがふたりとも、子どものために自分のできる限りのことはする」という条件つきで、玲香さんから結婚しようと言われた。智紀さんも納得し、ふたりは婚姻届を提出した。これまで通り、別居のままだ。
「同居のどの字も出なかったですね。次の更新時期に、僕は少しだけ玲香の自宅に近いところに越しました。子どもが生まれたら、僕だって世話したいし。そう言ったら、玲香もそうねと納得していた」
「のけ者にされたくない」 気持ちを伝えると…
臨月になっても彼女は、喫茶店の営業を続けていた。早く芝居の稽古がしたいなあと言いながら。そんな玲香さんを、智紀さんは「あまりにたくましくて、まぶしく見ているだけ」という状態だった。
「オレはもしかしたら玲香に頼られたいのかもしれないと感じました。人に頼られて、何かしてあげてその人の笑顔を見たい。そう思っているんじゃなかろうか、と。これまた一般的には普通のことなんでしょうけど。人として成長していなかったんですよね、きっと」
出産が近づいたらすぐに連絡してと、繰り返し玲香さんに頼んだ。放っておいたらひとりで病院に行って、ひとりで産んでしまいそうだったからだ。「のけ者にされたくない」と強烈に思い、その気持ちを玲香さんに伝えた。
「玲香は、やけに真剣な顔をして『わかった』と僕を抱きしめました。自覚しないまま、心の中に大きな穴を抱えて生きてきたあなたが、とてもかわいそうで愛しかったと、あとで玲香は言っていましたね」
出産時、智紀さんは玲香さんの手を握って見守り励ました。生まれたばかりの娘は、光り輝いて見えたという。命を生み出した玲香さんもまた、まぶしかった。
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