「沖縄県知事選挙」で新人「古謝玄太氏」が現職「玉城デニー氏」をリードの声も…古謝氏に囁かれる“弱点”と、選挙戦のカギを握る「妻の熱すぎる応援演説」
存在感を増す「亜希子夫人」
この弱点を補って余りある働きを見せているのが、妻・古謝亜希子氏である。8月30日の下地後援会でのスピーチで、亜希子氏は声を震わせ、手を震わせながら、涙を浮かべて夫の20年の歩みを語った。「自分の人生は沖縄を豊かにするために使いたい」という夫の思いを支え続けてきたと訴えるその姿は、単なる「泣き落とし」という言葉では片付けられない。震えていながら、語られる言葉の芯には一貫した強靭さもあった。生真面目で硬い候補者像を、人間味のある物語として補完する役割を、夫人は確実に果たしている。この評価は陣営の内外でも共有されており、政界関係者の間でも、亜希子氏の存在が選挙戦の帰趨を左右しかねないという見方もある。
一方、対する玉城デニー知事の側には、これまでとは異なる翳りが見え始めている。二期8年にわたって、玉城氏は言葉選びの巧みさと、誠実で穏やかな人柄というイメージを武器に支持を集めてきた。しかし今回の選挙戦では、そのオーラにかつてほどの輝きが感じられない。長期政権特有の疲労感が、有権者の目にも映り始めているということだろう。
現に、直近の情勢はいずれも古謝氏の優位を伝えている。党派色のない琉球新報・JX通信社の合同調査(8月28~30日実施)は数字の上では「横一線」としつつも、記事の見出しには玉城氏より先に古謝氏の名を置いており、勢いが古謝陣営にあるという現場の判断がにじむ。現地で広まっている自民党側の内部情勢調査とされるデータ(8月29、30日)では古謝44.1%、玉城40.9%と、数字の上でも古謝氏が一歩抜け出したという。いずれにせよ、「古謝当選」がすでに既定路線であるかのような空気が広がり始めているのは事実である。
それでもなお、筆者は、この段階での情勢報道を鵜呑みにするのは早計だと考えている。ひとつは、前回2022年知事選の前例である。あの選挙でも41市町村長の支持は保守系候補・佐喜真淳氏に大きく傾いていたが、結果は現職の玉城氏が6万4923票差をつけて再選している。
今回、沖縄タイムスの調査で古謝氏支持が29市町村長、玉城氏支持がわずか6人という数字が伝えられているが、これは前回と同型の構図であり、地方エリートの支持動員が一般有権者の投票行動と必ずしも連動しないことを、この前例は示している。もうひとつは、投票先を「まだ決めていない」とする層が4~5割にのぼるという事実である。沖縄の知事選では、告示直後の世論調査がそのまま最終盤の結果に直結するとは限らず、この巨大な浮動票の塊がどちらに動くかが、実際の帰趨を決めてきた。
それでも「デニー氏勝利」となるか
以上を踏まえたうえでの現段階での予測は、なお「保守ワンチームは成立したが、それでもデニーが勝利する」というものだ。ただし、これは目下の世論の潮目に逆らう賭けであることを承知のうえで書いている。
理由は三つある。第一に、下地氏個人の票は古謝陣営への吸収が進みつつあるものの、これまでの知事選で鍵を握ってきた公明党の組織票の動向は不透明であり、党本部・創価学会本部を挙げた全面的な組織動員までは実現していない。
第二に、亜希子氏の奮闘という「個人の資産」だけでは、中央官庁出身候補に対する沖縄独特の警戒感を完全には払拭しきれないと見るからである。
第三に、2022年の前例が示す通り、告示直後の情勢調査や地方エリートの支持動員は、最終結果を保証しない。無論、13日の投開票日までにまだ紆余曲折が予想される。いずれの陣営が勝つとしても、その差はごくわずかなものになるだろう。
第2回【玉城デニー氏と保守系新人の“一騎打ち”だけではない…「沖縄県知事選」の“無所属候補”をめぐる問題 組織の後ろ盾なくして「離島を含め2000カ所以上」にポスターを貼れるのか】では、新聞やテレビがほとんど取り上げない“知事選”の知られざる側面に光を当てている。





