「あぶない刑事」に岩井俊二監督の「野心作」も…過去の名作が「4Kリマスター版」で次々と蘇るのはなぜか “中高年層の集客”だけではない事情も
相次ぐ4K上映
「スワロウテイル」、「あぶデカ」という邦画界を盛り上げた両作品のみならず、今年に入ってから過去の名作の4Kリマスター上映が増え始めた。
1月1日から8月28日までの公開リストを見ると、洋画はホラー映画の名作「悪魔のいけにえ」(74年)、歴史大作「ラストエンペラー」(87年)、韓国のアクションホラー「新感染 ファイナル・エクスプレス」(16年)。
邦画は村上春樹氏の短編小説を映画化した「トニー滝谷」(05年)、細田守監督の「時をかける少女」(06年)、木村多江(55)とリリー・フランキー(62)の初主演作「ぐるりのこと。」(08年)。アニメはいずれも名作の「人狼 JIN-ROH」(00年)、「WXIII 機動警察パトレイバー」(02年)などが4K上映される。
10月23日には期間限定で、いずれもジブリ映画の「耳をすませば」(95年)、「借りぐらしのアリエッティ」(10年)が4K上映される。
前出の映画業界関係者によると、来年以降、さらに4K上映が増えそうだというが、それには、配信ビジネスの活況や物価高騰による映画チケット代の値上げで、ただでさえ集客に苦戦する劇場側の事情が大きく関わっているという。
「4Kリマスター上映が増えたことに加え、作品によっては100館規模の上映となる作品もあります。というのも、新作は興行が読みにくい作品もあり、過去のヒット作や話題作を高画質で再上映するのは、計算しやすい、つまり劇場側にとってはリスクが低い。そして、今や映画やドラマは配信で見るのが一般的になっていますが、配信でしか見たことのない作品を、大きなスクリーンと質の高い音響で見ることができるので、1人でも多くの人が劇場に足を運ぶきっかけになれば」(先の業界関係者)
このところ、話題を集める映像作品というと、確かに配信系が多く活況を呈しているが、映画館側も年々“進化”を続けている。
「観客が快適に過ごすことを大前提に、古い劇場は積極的に改修を進めています。以前は旧作をデジタル化しても、映画館側の設備が整っていないと上映できませんでした。現在は4Kプロジェクターを導入する劇場が増えており、受け入れる環境も整いつつあります。また、昔のフィルムは時間とともに劣化します。そこで、フィルムの状態が比較的良いうちに4Kなどの高解像度でデジタル化して保存することにより、名作を未来に残せます。例えばKADOKAWAは、保有する約1800作品の映画フィルムについて保存・4Kデジタル化を進め、劇場上映だけでなくパッケージ、放送、配信、海外映画祭などに活用しています」(同)
旧作の良さも……
4K上映が興行のみならず、映画界の未来に向けても大きな役割を担っているようだが、メリットばかりかというと、そうではない部分もあるという。
「たとえば、『スワロウテイル』などは、当時の映像クオリティーだからこそ、あのカオスな世界観に観客を引き込めたという面があるはずです。4Kの予告編を見た時は、映像がクリアすぎて……違和感を抱いたのは私だけではなかったはず。必ずしも最新技術のクリアな映像がいいというわけではない……これも映画の奥深いところだと思うのですが」(前出・映画担当記者)
また、テレビ界でもさらにクリアな映像を届けようと、4K放送ビジネスにNHKのみならず、民放各局も多額の設備投資をした。が、“テレビ離れ”が年々進んでいることもあり、民放各局は4Kビジネスからの撤退を表明した。
「テレビとは事情は違いますが、映画がすべて4Kで絶賛されるのではなく、旧作の雰囲気や映像表現の素晴らしさも守っていって欲しいものです」(同)




