誕生日の夜、恋人が消えた。口座の100万円、祖父の形見の時計もない…「完全に騙された」 女性を信じられなくなった僕が、それでも結婚を決めた相手とは

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今度は紘絵さんに“危機”が…?

 それから1年ほどたったころ、今度は紘絵さんに危機が訪れた。彼女には婚約者がいたのだが、その結婚がダメになったのだという。紘絵さんは自ら暴露して笑いをとり、気丈に振る舞っていたが、実はショックを受けているはずだと慎太さんは感じていた。

「今度は僕が励まさなければと、彼女を誘って食事に行きました。ただ、紘絵は破局の原因については何も言わなかったし、それほど落ち込んでいるようにも見えなくて。『どうしてそんなに強いの?』と思わず僕が尋ねてしまいました。すると彼女、『みんな私が振られたって決め込んでいるけどさ、振ったのは私だから』と笑い出したんです。なんだ、そうだったのかと僕も笑ったら、『どうして私が彼を振ったかわかる?』って。彼女の目が真剣そのもので、なんだか僕はドキッとしました。わからないと言ったら、『あんたはほんっと、鈍いよね』と。え、え、まさか……と思ったけど」

 次の瞬間、「私があなたを好きだからよ」と驚くような言葉が返ってきた。そうだったのか、そんなことがあっていいのかと彼はびっくりして何も言えなかった。

「すると、『いいのいいの。気にしないで。私は今まで通りの同僚関係でいいから。ただ、こんな思いを抱えて、他の男と結婚したくなかったのよ』と。やっぱりかっこいい女だと思いました。そのままふたりで飲み続け、僕のアパートに一緒に帰って、翌朝、プロポーズしたんです。彼女は『同情だったらやめてよね』と言ったけど、僕自身、彼女のことが好きだという気持ちを自ら封印していたんだと気づいた。先輩だし婚約者がいるし、そういう人に惚れてはいけないと思っていたから。彼女にもそう言いました」

「めでたい」2連発

 そこから結婚までは早かった。彼の28歳の誕生日の1週間後、そして紘絵さんの30歳の誕生日当日に、周りから盛大な祝福を浴びて結婚した。その2日前には妊娠も発覚、「めでたい」2連発となった。

「結婚は大人同士のことだから自分の意志で決めたけど、子どもは漠然ともっと先だと思っていたから、気持ちが少し混乱しました。大丈夫かな、オレ、父親になれるのかなと不安になった。でも紘絵は、『大丈夫大丈夫、ふたりでがんばればなんとかなる!』って。ああ、この人となら人生、大船に乗ったつもりでやっていけると思いました」

 次の人事異動で慎太さんが別の部署に移り、紘絵さんは産休ギリギリまで仕事を続けた。無理させたくはなかったから、慎太さんは家事の多くをこなしたが、「私がやるから」と紘絵さんはいつも笑顔を見せた。

「自治体の父親学級みたいなところへ行って、疑似妊娠を体験したんですよ。お腹に4キロくらいの重りをつけたら、もうキツくて歩けない。腰が痛くなってどうにもならない。それなのに女性はお腹が大きくなってもがんばってるんですよね。すごいなと思ったし、日ごろ、あまり顔を見せていなかった実家の母にも思わず電話して、ありがとうと言ってしまいました。もちろん、紘絵には毎日、感謝を伝えていましたよ」

 これが幸せなのかどうなのかはわからなかったが、「人生が豊かになっていく」ような気がしたと彼はいう。

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