「コメ価格にコミットしない」はずの“鈴木農水相”が「稲刈りが始まる前に備蓄米を買い戻したい」と決意表明…まれに見るコメ余りでも「米価は絶対に下げたくない」の本音
“コメバブル”前よりは高値
コメ価格の下落は絶対に阻止するという決意表明だと言える。「コメ価格にはコミット(関与)しない」「価格はマーケットの中で決まるべき」という普段の発言とは逆行しているように思えるのだが……。
農業経済学者で宮城大学名誉教授の大泉一貫氏はコメの売買に使われる「概算金」に注目する。
概算金とはコメ農家が出荷する新米に対し、JAなどが支払う前払い金だ。コメは半年から1年をかけてゆっくりと売られていく。前払いを行わないと、コメ農家の運転資金が枯渇してしまうのだ。
「いわゆる“令和の米騒動”は2024年の夏から始まりました。そのため24年と25年の概算金はバブル的な高騰を示したのです。24年は60キロの玄米に対して1万5000円から1万9000円、25年に至っては3万円から3万5000円にまで高騰しました。これが1万3000円から1万4000円にまで下がれば、バブル前の水準に戻ったことになります。今年はコメ余りの影響を見定めるため、概算金の提示を先送りしているJAも少なくありません。九州など早場米の産地では今のところ2万円前後が提示されています。日本有数の米どころである新潟県は1万8500円でした。マスコミは昨年と比較して『大幅下落』と報じていますが、バブル前を基準に置けば、まだ充分に高値で、24年の水準に戻っただけです」
5キロ2500円台が限界
大泉氏は「JAは概算金を少しでも高くすることでコメ価格の下落を必死に防ごうとしているわけです」と言う。
「コメの流通ルートは主に2つあります。1つは“非JA系のルート”で、こちらはコメ余りを反映して20%の価格下落が認められます。ところが“JA系ルート”は10%にとどまっているのです。概算金の額や流通価格を見ると、JAは『今年の新米が5キロ3000円台を割り込むことだけは避けたい』と考えていることが分かります。さらに『高市政権は備蓄米の早期買い戻しを実行してくれる』と予想していたのでしょう。買い戻しは正式に発表されていないのでまだ詳細は不明ですが、5キロ3000円台、ブランド米は3500円台を維持するかどうかが焦点の一つになると思います」(同・大泉氏)
昨年の5月から10月まで、農水相は小泉進次郎氏が務めていた。その際、備蓄米を5キロ2000円前後で販売させたが、売れ行きは非常に好調だった。
つまり消費者が望むコメの“適正価格”は5キロ2000円か、それ以下だということが分かる。ところが史上稀に見るコメ余りが起きても、備蓄米の買い戻しなどにより、消費者が望む価格帯までは下がらない可能性があるというのだ。
農水省は離農を歓迎
大泉氏は「農水省とJAのコメ政策は、根本から間違っていると批判せざるを得ません」と指摘する。
彼らは「5キロ3500円台を死守することで、日本のコメ農家は持続可能になる」と主張している。だが本当は「5キロ2000円でもコメ農家が利益を確保できる農政」を実現するべきなのだ。
農水省とJAはコメ農家を守ると繰り返しているが、実はコメ農家を追い詰めているという。その“矛盾”が最も劇的に現れるのが離農者に対する政策だ。コメ農家を守るはずの農水省は離農が増えることを歓迎しているきらいすらあるのだ。
後編【コメ農家への支援は「5キロ3500円を死守」 専門家が「コメ価格の高値維持がむしろ農家を苦しめる」と指摘する理由】では、お伝えする──。
註:「息子に農家止めろと言いたくない」コメ生産現場の切実な声 需給安定へ備蓄米の買い戻しなど要請 鈴木憲和農水大臣「稲刈り前に対応」(8月19日:テレビユー山形)
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