「決裁にハンコが10個くらい必要なのに上司たちは何を見ていたのか」法務省「ラブ上等」厚労省「がん患者支援」タイアップ中止騒動に元経産官僚の岸博幸氏が喝!
法務省と厚労省でエンターテインメント作品とのタイアップ企画を中止する騒動が立て続けに起きた。なぜ国の機関がすぐさま撤回に追い込まれるような表現に気づけなかったのか。元経済産業官僚で慶應義塾大学教授の岸博幸氏に話を聞いた。
なぜこんな初歩的なミスを…
「報道を見て、なんじゃこりゃと思いました。いずれのケースでも、ちょっと頭の体操をすれば気づける事案でしたので」(岸氏、以下同)
最初にやらかしたのは法務省保護局だった。〈更生上等!〉〈立ち直りって、ラブだ〉。8月5日、MEGUMIがプロデュースしたことで話題のNetflixリアリティシリーズ「『ラヴ上等』シーズン2」とのタイアップを発表。だが、ポスターの中央に写るのはいかにもヤカラ風な若い男女8人。“全身刺青”の男性まで…。
保護局の仕事は、犯罪や非行に走った加害者の立ち直りを保護観察官や民間ボランティアなどと協力しながら支援することだ。だが、番組自体は「更生」よりも「エンタメ」を重視した作りで、「人に火をつけた」と過去の重い罪を武勇伝のように打ち明ける男性まで出演していた。
「被害者からすれば、いくら更生していると言われても傷つくのは当たり前です。そもそも過激な表現が含まれるコンテンツだったのに、なぜこんな初歩的なミスを見抜けなかったのか」
ちょっとでも患者の気持ちになれば気づいたはず
法務省は21日、タイアップを中止。間髪入れず、同じような失敗を繰り返してしまったのが厚労省だった。19日、AYA世代(15〜39歳)のがん患者向け支援制度の周知を目的として、川口春奈主演の映画「ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記」とのタイアップポスターを発表。映画はタイトルにあるように、がんを宣告された女性が、出産のために治療を止めるという命がけの選択を描いた内容だった。
「私も多発性骨髄腫を発症し、余命を宣告されている身です。私自身は世間に病状を公表して悲観せずに前向きに仕事を続けていますが、そんな私ですらこれからどうなっていくかという不安はつきません。例えば、テレビで高額医療費制度のニュースが流れるだけで無意識に反応してしまうのです。ましてや、若くしてがんを発症してしまう患者に向けた広告なのですから、死を意識させてしまう内容など絶対に避けるべきでしょう」
厚労省も発表からわずか3日後の24日、「患者の皆様やそのご家族等への配慮に欠ける点があった」としてタイアップ中止の発表に追い込まれた。
岸氏が訝るのは、なぜ「組織として」リスクに気づけなかったのかという点である。
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