僕らを捨てて若い秘書と逃避行した母が、フラれてあっさり戻って来た…それでも父は「ここにいればいい」 「女性の不気味さ」を知った40歳夫が選んだ“交際ゼロ日婚”
出遅れた就活
そんなこんなで就活に身が入らなかった。というのは言い訳みたいなものだけど、と彼はつぶやく。父のようにサラリーマンになっても定年を待たずに命の火が消えることもあるし、母のように事業主になっても自ら手放すこともある。何を信じたらいいかわからなかった。
「まあ、それでもとりあえず食べていかなくてはいけない。仕事に人生を賭けるのではなく、生活のために仕事をしようと思いました」
出遅れた就活だったので大手企業を望んでも無理な話。中堅企業で、これから伸びそうなところ、高すぎず低すぎない給与を出してくれるところを探した。ようやく内定をもらったのは卒業3ヶ月前だった。
「入社した会社は、当初、新卒を採らない方針だったようです。でも新卒を採らないのは企業としてどうなのかと社内で議論が起こって、結局、ひとり採ることにした、と。『今からじゃいい学生はいませんよね』と思わず面接で言ってしまったら、役員たちが『そちらも同じ思いでしょう』って。なんだか和やかな面接を終えた瞬間、『来てくださいよ、うちに』と言われたんです。え、そんな簡単でいいのと思いましたが、他に行くあてもないのでその場で『ありがとうございます』って。これも縁なんでしょうね」
すんなり決まった就職だったが、「仕事」というものはそう甘くはなかった。アルバイトはいくつも渡り歩いたが、正社員として雇われた限りは期待に見合うだけの仕事をしなければならない。社会人って大変だと改めて感じたという。
それでも次第になじんでいき、里緒さんのグループに配属されたときには「それなりに期待されていたと思う」と言った。やる気いっぱいの若いチームは言いたいことを言い合って切磋琢磨を繰り返していた。
交際ゼロ日婚
そんな中で、里緒さんとはよく一緒に食事をしたり飲みに行ったりした。彼女の仕事のやり方は時として無謀だったが、ゴール設定からの逆算の計画性がすごいと彼はいつも思っていたという。
「強引だし無茶だしという側面はありましたが、それをみんなで埋めあいながら進めていく快感がありました。彼女自身、現実主義というよりは少しロマン派なんですかね、常に理想に一歩でも近づきたいという生き方をしているように見えて、そこはけっこう影響を受けました」
ともに仕事を重ねていくと、相手の人間性も見えてくる。大胆にして繊細、決断は早いけどあきらめが悪いと彼女は自己分析をしていた。「おもしろい人」という興味から、「大事な人」に変わるのはそう時間がかからなかった。
「僕が30歳になったとき、チームと課長が誕生日を祝ってくれてみんなで一緒に食事をしたんですが、『ほしいものはないのか』と課長に聞かれて、『里緒さん』と答えたんですよ。みんな冗談だと思って笑ってたし、僕も冗談交じりだったんだけど、当の里緒さんが『いいよー』って。そこから一気に結婚が決まっちゃいました」
交際ゼロ日婚である。数日後には婚姻届を提出した。さすがにチーム内に夫婦がいるのはどうかと彼は考え、異動願いを出したが却下された。
「大人だから職場でべたべたするわけでもないだろと課長に言われて……。そういえば僕たち、同居の計画もなかったので、周りは偽装結婚かと笑っていましたね」
ただ、偶然、ふたりの住まいは近かった。自転車で15分ほどだ。いきなり同居するより、まずは恋人関係を楽しもうということになり、別居婚がスタートした。
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記事後編では、浩樹さんが妻の「重大な秘密」に直面するまでを紹介している。
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