9軒の家が17軒に分割され…住宅街で切り売りされる土地と急速に失われる緑 住人の権利より開発業者の利益が優先される日本は「住環境後進国」だ
住人の権利より業者の利益が優先される日本
土地を分筆し、建売住宅を建てたほうが売りやすい、と書いたが、それは隅から隅まで業者の論理である。業者が確実に販売でき、より利益を上げられる、ということが、ほかのすべてに優先されている。環境の悪化によって周囲の住民がこうむる不利益や、民有地の緑の減少のように、地域全体の環境が悪化する危険性について、まったく顧みられていない。
すでに書いたように、業者にとっては広い土地は分筆しないと売りにくいらしい。だから、業者は、できるだけ売りやすいように開発する。横浜市にも敷地面積の最低限度など一定の規制はあるが、既存の住環境や緑を守るには十分とはいえない。一方、周囲の住人は隣家が細分化され、狭い家がひしめき、緑もない環境に変わってしまっても、黙ってそれを受け入れるしかない。業者が利益を上げるために、環境が悪化する不利益に甘んじるしかない。あまりにバランスが悪く、既存の住人の権利が軽んじられすぎてはいないか。
業者の権利が最優先される状況に対しては、本来、地方自治体が介入すべきである。地方自治体には、住民福祉の増進を図る役割がある。各地で日々、住民の不利益が生じている状況を放置しているのは、不作為としかいいようがない。
ヨーロッパの一部の国や自治体では、都市景観や住環境を維持し、無秩序な開発を防ぐため、土地の分割には制限が加えられている。法律や都市計画によって、最低面積が厳しく規制され、極端に狭い土地や変形した土地が生まれて、環境が損なわれるのを防いでいる。たとえばオランダのアペルドールン市では、市街地内で土地を分割して住宅を新設する場合、独立した戸建て住宅は最低300平方メートル、二戸一住宅は1戸につき最低250平方メートルの敷地を確保するよう定めている。
要するに、ヨーロッパには、アペルドールン市のように土地の分割を認める場合にも一定の敷地面積を確保し、住環境への影響を抑えようとする自治体がある。一方、日本では、業者が手間なくスムーズに販売でき、高い利益率を確保できることが優先される。この彼我の差には愕然とするほかない。そもそも現在は、急速に少子化が進み、人口の急減が確実な状況だ。それなのに、業者が利益優先で住宅戸数を増やすのを黙認するのは、社会的に妥当とはいいがたい。
既存の住人ががまんせざるをえない日本のあり方は、世界標準であるどころか、きわめて後進的である。働き方改革にせよ、ハラスメント防止にせよ、権利が重視される社会へと進んでいるなかで、住人の権利が無視されたままなのは不思議でならない。
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