9軒の家が17軒に分割され…住宅街で切り売りされる土地と急速に失われる緑 住人の権利より開発業者の利益が優先される日本は「住環境後進国」だ
急速に減少する民有地の緑
Sさんの事例は少しも特殊なケースではない。現在、首都圏をはじめ大都市圏の住宅街で広く起きていることで、Sさんの居住エリアは、全体が敷地の狭い建売住宅だらけになりつつある。なぜ、こうなってしまうのか。
Sさん宅の周辺の家は敷地面積が70坪から100坪程度あったが、土地の価格が1坪100万円とすると、70坪で7000万円、100坪だと1億円になる。上物を建てれば最低でも1億円前後にはなってしまう。現在、東京都内の新築マンションの平均価格は1億3000万~1億5000万円程度だから、それにくらべて高いとはいえない。だが近年、1億円を超える予算をもつ住宅購入層は、多少狭くても都心のマンションをねらう傾向にあり、都心への便が悪くない近郊の戸建ては、もう少し安いほうが売りやすいのだという。
このため前の所有者から古家が建つ土地を購入した業者は、1区画35坪から50坪ほどに土地を分筆し、そこに建売住宅を建てて6000万円から7000万円台で売るのである。このぐらいの販売価格帯なら、より幅広い層が対象になるので、より早くより確実に売ることができる。また、戸数が増えた分、より多くの住宅を販売できるので収益も上がる。
しかし、こうした土地の細分化は、環境の悪化に直結する。まず、土地が分筆される際に庭木は躊躇なく伐採される。また、分筆後は1区画あたりの敷地面積が狭くなり、建物が敷地いっぱいに建つため、樹木を植える場所がない。そのうえ最近の傾向としては、植え込みの手入れなどをしなくていいように、建物の周囲を駐車場などコンクリートで固める傾向にあるので、なおさら樹木が減ってしまう。
東京23区や横浜市などでは、緑の多くを民有地に依存しているが、こうしていま、民有地の緑は急速に減少している。たとえば東京都練馬区では、この10年で民有地の緑が1割ほど減ったというデータがある。この傾向は大都市圏の多くで共通し、緑が減少する速度は増している。
だが、はたして、起きていることは仕方ないことなのか。住環境があまりにないがしろにされていないか。
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