ひどい物価高でも「デフレ脱却」を認めない高市総理 積極財政と低金利で「さらなるインフレ」を招く危うさ

国内 社会

  • ブックマーク

インフレの現状を「デフレ」と言い張りたい理由

 早い話が、高市総理は国民が物価高にあえいでいるインフレの現状を、どうしても認めたくないようです。現状を「デフレ」と言い張り、デフレ脱却のための経済政策を重ねていきたいようです。だから、7月21日に閣議決定された『経済財政運営と改革の基本方針』、いわゆる「骨太の方針」にはこう書かれています。

〈「強い経済」の実現に向けては、「安定的な物価上昇」の実現に資する適切な金融政策運営が行われることが非常に重要である。政府は、引き続き、日本銀行と緊密に連携し、デフレに逆戻りすることのない物価安定の下での持続的な経済成長の実現に向け、一体となって取り組んでいく〉

 いったい、いつの経済状況のことを書いているのか、と目を疑ってしまいます。いまは国民が物価高に苦しみ、多くの人がいちばん強く望んでいるのが物価高対策なのに、実現をめざしているのは「安定的な物価上昇」だというのです。そのために日銀と連携するとは、日銀に圧力をかけて金利を上げさせないようにしたい、というのと同義でしょう。

 結果として低金利が続いているため、すでに述べたように、私たちの資産は目減りしています。そのうえ日本と欧米の金利差も縮まらないので、円安は解消しないどころか進行し、輸入大国の日本では、それがさらなる物価高に直結していきます。

 高市総理は6月に国会で、飲食料品の消費減税についてこう語りました。「物価高対策として少しでも効果があると考えたら、躊躇なくやるべきだ」。筆者はこれを聞いて、意味がまったくわかりませんでした。ほんとうに物価を下げたいと思っているなら、日銀と連携してむしろ利上げに導かなければならないし、インフレ下でお金を注ぎ込みすぎるとインフレを加速させてしまうので、つまり物価がさらに上がってしまうので、積極財政もほどほどにしなければならなかったはずです。

 ところが、上記のようにインフレ対策として「効果がある」ことには「躊躇」して手をつけず、効果がないばかりか、財政の悪化を招いて物価高につながりかねない消費減税は「躊躇なくやるべき」だというのです。なんというまやかしでしょう。

 高市総理はなんとしても積極財政を推し進めたいのでしょう。でも、インフレ下でそんなことをするのは狂気の沙汰だから、なんとしても現状をデフレということにしたいのでしょう。しかし、それほどの民意の無視はありません。そもそも、インフレなのにデフレだと言い張って積極財政を推進するなど、糖尿病患者に糖質や脂質をたっぷりあたえ続けるようなもの。恐ろしすぎます。

 しかし、恐ろしい状況は金融市場がチェックしています。総理も政権も、国民は欺けても金融市場は欺けません。その結果、日本の価値が際限なく下がっていく、という状況をどうやって防げばいいのか。いまは方法が見当たりません。

香原斗志(かはら・とし)
音楽評論家・歴史評論家。神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。著書に『カラー版 東京で見つける江戸』『教養としての日本の城』(ともに平凡社新書)。音楽、美術、建築などヨーロッパ文化にも精通し、オペラを中心としたクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』(アルテスパブリッシング)など。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。