投高打低の原因とも…プロ野球ファンをヤキモキさせる「飛ぶボール」「飛ばないボール」論争 “統一球”導入でも問題が解決しない理由

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球場にあったボールを

 私が長年取材してきたドラゴンズは、ナゴヤ球場時代には玉澤のボールを使っていました。同社のボールはプロ野球界では「飛ばないボール」と言われていました。戦後まもなく作られたナゴヤ球場は、90年代には狭い球場の一つになっていましたから、球場にあったボールだったということでしょう。

 しかし、1997年に日本で一番広い規格で建てられた当時の「ナゴヤドーム」に本拠地を移転すると、「飛ぶボール」と言われていたミズノ製に切り替えました。

 実際に試合で使用されるいわゆる「試合球」は1試合当たり10~12ダースが準備されます。ファウルがやたら多くて足りなくなる可能性が出てくると、試合中に慌てて用具担当スタッフが総出で新品のボールを包み紙から出して砂で表面をこすり、試合で使えるボールに仕上げていました。余談ですが、こうした事態に対応し、普段からスムーズに受注してボールを供給するため、メーカーから社員が「球団付き」として派遣されていました。

 ドームに移転したことで試合球供給の契約を切られた玉澤は、契約終了後もバットやグローブなど自社製品を使う選手のサポートのため、しばらく球団付き社員を置いていましたが、一番の収入源であるボールの供給が打ち切られたことで収支が合わないことから派遣をやめています。

 本題に戻りますが、1試合だけで10~12ダース、さらに練習で使う練習球の数はこの比ではありませんし、プロ野球では練習球が劣化してくるとすぐに新しいボールに変えていましたので年間に供給するボールの数は相当なものでした。だからこそ、各メーカーは1球団でも多く自社のボールを採用してもらおうとしのぎを削っていたのです。各メーカーにとってボールの採用は大きなビジネスでした。

 こうした状況に大きな変化が起きたのが2011年。NPBが全球団共通の試合球を使用する「統一球」を導入します。理由は「国際試合で好成績をあげるため」とされました。日本代表は2006年、09年とWBC優勝という結果を残しましたが、特にピッチャーから「MLBのボールは皮が滑る、縫い目が低くてコントロールしづらい」といった声が多く上がっていました。

 MLBの統一球は、ローリングス社が独占供給しています。MLB主催のWBCでも当然ローリングス社のボールが使われます。単純に国際基準に合わせるならNPBもローリングス社のボールを統一球として採用すればいいように思いますが、長年プロ野球を支えてくれた国内メーカーを反故にするわけにもいかない大人の事情も絡みます。そこで統一球についての基準を設け、ミズノ製のボールを統一球として採用することが決まりました。

 それまでプロ野球界では、ミズノのボールは「飛びやすい」と言われていましたが、NPBが「反発係数」に関する基準も設けたため、ミズノは低反発のゴム材を芯に使った従来よりも反発係数を抑えたボールを供給しました。

 この結果、前年の2010年は1605本だったホームランの数はこの年、939本と激減しました。翌12年にはさらに減って881本に。ところが13年は1311本とホームランの数が急増しました。

 同じ統一球を使っているのに前年から430本も増えたわけで、シーズン中から今年急にホームランが増えたのはおかしいという疑問の声があがり、当初はNPBもミズノも統一球を変えたことを否定していましたが、のちに変更を認めました。

 実際には2011年と12年に使われたボールはNPBの定める反発係数の基準値を平均で下回っていたことが判明し、13年から新たに設定された基準値で、しかも上限に近いボールに変更されていたのです。

 使われるボールは12球団同一なので、それぞれの年で統一球の特性が変わってもペナントレースに不公平は生じないかもしれませんが、「統一球」と言いながら年によってボールの特性がバラバラでは年度別の成績の比較が同じ条件ではなくなってしまいます。

選手には別の意見も

 さらに全く別角度からの話になりますが、選手会側からも以下のような意見が出されました。

「出来高契約を結んでいる選手にとって、年によってボールが飛ぶ、飛ばないでは投打ともに労働条件が変わってしまう」

「飛ばないボールが使われた年の成績で引退を余儀なくされた選手が、飛ぶボールが使われていたらまだ現役を続けられた可能性もある」

 その後、13年に使われたボールが基準となり、統一球について大きな議論になることはありませんが、一部のファンから「飛ぶボールではないのか」逆に「飛ばないボールではないのか」といった声があがることがあるのは、この騒動が少なからず影響しているのではないかと思います。

 さらにその原点に立ち返れば、「国際試合で好成績をあげるため」という目的のため導入されたはずのNPBの統一球です。ところがMLBの統一球との違いはその大きさを含め全く改善されていません。その証拠に、今年のWBCに参加したピッチャーも日本代表に選ばれるとローリングス社のMLB統一球を取り寄せて、少しでもそのボールに慣れようとする姿が見られました。

 本来の目的を追求するなら、MLB統一球に準じたボールを作るべきだと思います。日本の技術力でできないわけはないと思います。

 あなたはどう思いますか?

村上和宏(むらかみ・かずひろ)
フリーアナウンサー。1967年、広島県出身。専修大学法学部卒業後、91年に東海ラジオ放送入社。制作局アナウンサーとして、主にスポーツ実況を担当。2025年の退社まで、プロ野球をメインに多くの番組制作に携わった。現在、バンテリンドームナゴヤのDAZNドラゴンズ戦実況、「プロ野球ニュース」(フジテレビONE)などに出演中。

デイリー新潮編集部

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