熊本地震で“ペット同伴避難所”を提供した獣医師 日本では「わが子と共に避難生活」が進まない… 「人命優先だからこそペットも」という考え方
ペットを守ることは、結果として人を守る
また、受け入れる側だけでなく、飼い主にも十分な情報が届いていないのが現状だ。アイペット損害保険が2026年に犬・猫の飼い主を対象に行った調査では、最寄りの避難所のペット受け入れ体制を「知らない」と答えた人が88.4%に上った。
こうした現状を変えるため、德田院長は行政や社会の意識改革を強く訴える。
「『犬や猫を助ける』という視点で考えがちですが、そうではない。ペットは飼い主の生きがいであり命の支え。たとえば高齢者を助けたいのであれば、その生きがいであるペットも一緒に助けなければ、おじいちゃんやおばあちゃんも生きていけない。“人を助けるためにペットも守る”という意識を持ってほしいですね」
避難所の駐車場に犬をつなぎ、そのそばで過ごす被災者の表情は暗く、思い詰めていることが多いという。一方で、竜之介動物病院でペットと一緒に過ごしている被災者は、動物をきっかけにして隣の人と会話が生まれ、自然と助け合うコミュニティができていく。
「家族であり守るべき存在であるペットを抱えている人の方が、むしろ災害や困難を乗り越える力が強いと感じますね」
ストレスで体調を崩すペットたち…飼い主に必要な備え
今回の地震でも、直後にパニックから過呼吸になるペットがいたほか、猛暑による熱中症で命を落としたペットは德田院長の患者だけでも3頭。関連死をふくめると40頭にのぼるという。現在も余震が続く恐怖から食欲を無くし、嘔吐や下痢といった消化器症状を起こす犬猫は少なくない。
「人間以上に、動物は余震の恐怖や環境の変化に敏感です。精神的なストレスから体調を崩す子が本当に多いのが現実です」
では、私たちは日頃からどのような備えをしておくべきなのだろうか。まずは、ペットの預け先や同伴避難できる避難所を把握しておくことだ。
「自治体に確認しておくのもいいですが、地域の動物病院が一番確実な情報の窓口になります。かかりつけの病院が災害時にどう動くのか、平時から確認しておくと安心ですね」
飼い主自身の防災意識を高める工夫も欠かせない。避難所でのトラブルを防ぐためのしつけやケージ慣らしはもちろん、迷子札やマイクロチップの装着、ワクチンの接種や寄生虫駆除、ペットフードやトイレシートなどを入れた非常用持ち出し袋の準備も必須だ。
「ペットを飼うことで、家族の防災意識も高まるし、日頃のコミュニケーションや観察力、思いやりの心も育まれる。ペットがいるからこそ、人間は災害を乗り越えられるんです」






