明徳義塾・馬淵監督の「高校野球衰退」発言が波紋…強豪校の“スカウト合戦”と浮上する「NPBユース構想」

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 8月10日、夏の甲子園で明徳義塾は日南学園に1対2でサヨナラ負け。1990年の監督就任から37年目となる名将・馬淵史郎監督は試合後、有望中学生を巡る“スカウト合戦”に苦言を呈した。【西尾典文/野球ライター】

有望選手の獲得なしには上位に進めない

「素材の良い選手をスカウト合戦みたいになってね。そういう選手が集まった時は強いし、集まらなければというようなことでは、高校野球が衰退していくんじゃないかと思いますけどね」

 明徳義塾は全国的な強豪校で、県外出身者を数多く受け入れている。今年のチームにプロのスカウトから注目される選手は不在だった。馬淵監督からは、突出した戦力に頼らず選手を鍛え、甲子園出場まで導いた点を誇る発言も聞かれている。育成の重要性を強調したかったのだろう。“スカウト合戦”という言葉の強さから、SNSなどでは賛否を呼んだ。

 現実を見ると、馬淵監督の指摘を簡単に否定するのは難しい。今大会で準々決勝へ進んだ8校は、初出場の有明を含め、すべて県外出身者を受け入れている。力の入れ方に差はあっても、有望選手の獲得なしに全国上位まで勝ち進むのは難しい時代になったと言えるだろう。

 とはいえ、強豪校が「スカウティングを強化している」と大々的に公言する例はほぼない。高校野球界には、2007年に表面化した特待生問題の影響が今なお残っている。

 当時の日本学生野球憲章は、野球の能力を理由とした学費や生活費の支給などを禁じていた。大規模な実態調査によって377校、7920人の野球部員が特待生だったことが判明し、高校野球界を揺るがす問題へ発展した。

 日本高野連は以降、中学生への勧誘をルール化。違反した学校では、指導者に謹慎などの処分が科された例も出ている。

野球用具を自費で買ったことがない

 では現在、強豪校はどんな方法で有望選手を獲得しているのか。ある高校の指導者は、中学クラブとの関係を最初に挙げた。

「最も多いのは高校と中学のチームの指導者同士の繋がりですね。中学のこのクラブチームはこの高校と繋がりが強いというのはよくあることです」

 高校側は監督同士の関係だけに頼っているわけではない。地域ごとに独自の情報網を築き、選手の情報を集める学校も存在する。

「監督自らが勧誘に動くだけでなく、周囲に協力者を抱えている高校もあります。協力者はその高校のOBや監督、コーチの親族ということもある」

 全国レベルの強豪校になるほど、ネットワークは広範囲に及ぶという。

「全国レベルの強豪校になるとあらゆる地域に協力者がいます。高野連は第三者がブローカー的な役割をすることを禁じていますが、様々な形で協力することは可能で、それを取り締まるのは現実的ではありません」

 選手側へ提示される条件も、授業料の免除だけとは限らない。

「授業料などの直接的な方法ではなく、用具の提供や遠征費の補助などを学校ではなく後援会から行うこともある。また入学の時点で有名大学の推薦について提示するケースもあると聞きます」

 筆者自身、甲子園で活躍し、大学を経てドラフト1位でプロ入りした選手を取材した際、「高校入学が決まってから野球用具を自費で買ったことがない」と聞いた経験がある。表立って語られる機会は少ないものの、強豪校による選手獲得競争は現在まで続いている。

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