シベリアの二宮和也、広島の宮沢りえ、フランス人監督が描く小野田少尉…平和への思いを新たにする「2000年代の戦争映画」5選
女子高生と特攻隊員の恋
〇「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」(2023年)
現代の女子高生が、戦時中の日本にタイムスリップし、そこで出会った特攻隊員の青年と恋をする。若い観客を動員し大ヒットした。
高校生の百合(福原遥)は、進路をめぐって母(中嶋朋子)と対立した後、近所の防空壕跡で眠ってしまう。目覚めるとそこは1945(昭和20)年6月14日、戦時中の日本だった。町を茫然とさまよう百合に、彰(水上恒司)や食堂を経営するツル(松坂慶子)が手をさしのべる。やがて百合は、彰たちが自ら操縦する飛行機で敵の船に体当たりする特攻隊員であることを知った。
百合と彰の間には、お互いを慕う感情が芽生える。なのに彰は「国のために死ぬこと」を決意していた。日本はもうすぐ負けて戦争は終わることを知る百合は、彰たちの命を救えるのか……。
3年前に公開され、興行収入45億円、観客動員数350万人を記録。観客層は主に10代、20代が中心で、SNSで「号泣した」などの投稿が広がり人気となった。「あの花」の略称で呼ばれ、リピート鑑賞を「追い花」というなど社会的現象となる。
戦争の実際の悲惨さが描かれていないという意見もあるが、意義ある作品だろう。なぜならタイムスリップという若い人に人気の題材を使い、自分と同世代の人間が戦争で死んでいったことを知るきっかけとなったからだ。
続編の「あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。」が現在公開中だ。百合(福原遥)が現代に戻ってから7年後、高校教師となっている設定だ。こちらは果たして「あの星」と呼ばれるだろうか。
戦場であったことを知る
〇「野火」(2015年)
それでは戦場の実際を描いた作品を紹介したい。大岡昇平の戦争文学を、塚本晋也監督が映画化した。塚本監督はベトナム戦争の体験と帰還後の葛藤を描いた「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」の公開(9月11日)を控えている。
日本の敗戦が色濃くなったフィリピン・レイテ島。田村一等兵(塚本晋也)は肺病となり、所属隊から野戦病院へと追い出される。しかし病院でも相手にされず戦場を彷徨うことに。そこで田村が経験したこととは……。
島の女性に見つかり騒がれたために射殺してしまうところから田村の運命は暗転する。そして、兵隊の安田(リリー・フランキー)や永松(森勇作)と出会い行動を共にするが、彼らが飢えのために人肉食をしていることを知る。タブーとされていたことにも果敢に踏み込む。
そして最も目に焼き付くシーンは、移動中に米軍の一斉射撃に遭い仲間が全滅してしまうところだ。人間の肉体がボロ切れのようになっていく様子がこれでもかと描かれる。この凄惨な場面については賛否両論があったが、塚本監督は「本当の戦場は、こんなもんじゃない、やはり描かないわけにはいかなかったんです」と語っている。こうした現実を自分たちが経験することのないよう「意思表明を込めた」と(「キネマ旬報」2015年7月下旬号)。
悲惨な場面だからといって目を背けてはならない。この夏、観るべき戦争映画の一本だろう。
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