「どこへ投げてんだ!」「それくらい避けろ!」 警察沙汰にまで発展した“昭和の乱闘”…死球増でもケンカにならない令和との違い
伝説の乱闘(1)
かつてはラフプレーも多く、デッドボール以外で乱闘に発展するプレーの代表例は、盗塁や進塁でベースに滑り込む際、スパイクの歯がついた底をベースカバーに入った選手の足に当てる、いわゆる「スパイク」。もう一つが、ホームベース上でのクロスプレーでキャッチャーがベースをブロックして、必要以上に強くタッチする、あるいはランナーのほうがキャッチャーにまるでタックルするように体ごと突っ込む、というものでした。
こうしたプレーが少なくなかったため、今は「コリジョン・ルール」などで禁止されているわけです。
ラフプレーでの乱闘で、私が一番、印象に残っているのは、カープが悲願の初優勝を果たした1975年の広島―中日25回戦です。これは、乱闘だけで済まない、一大事件に発展した事案でもあります。
当時、生まれ故郷の広島で小学2年生だった私は、カープがいよいよ優勝かと、クラスメイトと毎日のように前の日の試合を振り返り、大いに盛り上がっていました。広島中の子どもやファンが同じ気持ちだったはずです。
熾烈な優勝争いを続けるカープとドラゴンズ。9月9日からの直接対決は「天王山」と呼ばれ、カード初戦は4-0でカープが勝利しました。これで首位はカープ。2位タイガース、3位ドラゴンズがそれぞれ1ゲーム差と、まさに接戦です。絶対に負けられないドラゴンズは、星野仙一を2戦目にぶつけてきた9月10日――事件は起きました。
9回表を終わって5-2でドラゴンズがリード、9回裏カープは粘りを見せて2点を返し1点差、なお2アウトランナー2塁の場面で4番・山本浩二(79)がセンター前にヒットを打ちました。セカンドランナー三村敏之がホームに突っ込みましたが、ドラゴンズのキャッチャー新宅洋志(82)がブロックしてアウト、ゲームセットになりました。
このとき新宅のタッチが三村の顔面に当たり吹っ飛ばされました。三村は新宅に詰め寄り両ベンチから一斉に選手、コーチも飛び出します。この日はドラゴンズ先発の星野が3つもデッドボールを与えていたこともあって、一気にヒートアップしたのです。
ところがこれだけに止まらず、興奮したファンがグラウンドになだれ込み、収拾がつかない事態となりました。当時の記録を紐解くと、グラウンドに約500人のファンがなだれ込んでドラゴンズの選手を殴るなどし、球場正面入り口付近には約2000人が押し掛け、ドラゴンズの選手用バスと通路を取り囲んだため、グラウンドの騒ぎが収まってもドラゴンズの選手はベンチに閉じ込められる事態となりました。
結局、広島県警からは機動隊員も含め、計250人の警察官が出動して、試合後1時間が経過した午後11時5分に騒ぎを収め、パトカーに守られてドラゴンズの選手は宿舎に戻りました。当然ながら、グラウンドになだれ込んだファンの一部は逮捕されています。
3連戦の2戦目で起こったこの事態を受け、3戦目は中止となり、ドラゴンズの選手は翌日もパトカーに守られて広島駅にバスで移動し、新幹線に乗り込みました。子供の私には衝撃的な出来事でした。
伝説の乱闘(2)
ヤジが原因で乱闘になった試合として有名なのは、その模様が全国にテレビ中継された1990年5月24日の中日VS巨人戦でしょう。
3回裏2死3塁の場面で、ジャイアンツの先発・槙原寛己(63)が、打者バンス・ローの顔面付近に投げてきました。にらみ合いにはなったものの、その場は収まりかけましたが、ベンチを出て「危険球だろ」と審判団に訴えていた星野監督に、ジャイアンツの松原誠コーチ(82)が「あそこを狙うのは当たり前だろう」などと3塁ベンチからヤジったため星野監督が激高、すぐに両ベンチから選手が飛び出して乱闘となりました。
この時、星野監督が止めに入ったジャイアンツの水野雄仁投手(60)にビンタを食らわせる姿がそのまま全国に中継されるなど、衝撃のシーンが展開されました。
ちなみにこの試合で、前述の鹿島さんが9回にクロマティ(72)に危険球を投げ、退場処分を受けています。監督からの指示であったことは言うまでもありません。
とまあ、「火事と喧嘩は江戸の華」ではありませんが、昔のプロ野球では派手な乱闘がスタンドのファンも一緒に興奮する、ある種の「魅せる」要素だったのかもしれません。
時代は流れ、今はデッドボールを当てたピッチャーはすぐに帽子をとって謝るのが当たり前となり、ベンチから相手チームが激高するようなヤジを飛ばすコーチや選手もいなくなりました。
ラフプレーは新たにできたルールによって封印されていますが、デッドボールと言えば、今シーズンは冒頭でも述べたような試合展開から、阪神の藤川球児監督(46)が苦言を呈しているコメントが多くなっています。近本光司(31)のように、それが原因で戦列を離れる事態(骨折で2カ月半)が実際に起きているので、神経質になるのは当然で、選手にとっても翌年の年俸にかかわる大問題です。
ただ、今は「わざと」死球を投げているピッチャーはいないと思います。よりコントロールを磨け、ということになるのでしょうか。
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