なぜ、なぜ、なぜ、「Tシャツ」に違和感…夏ドラマ、評判と数字のねじれ現象 低視聴率「さよならノワール」は出色

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高視聴率でも違和感

 一方、蒼井優(40)にとって18年ぶりの地上波連続ドラマとなるTBS「Tシャツが乾くまで」は、第4回までの個人視聴率の平均値が3.9%。週間ランキングで常にベスト5に入る。ただし、制作者から違和感を指摘する声も聞かれる。筆者自身、何度か首を捻った。

 バス事故と同時に、主人公・瀬尾咲子(蒼井)の夫・充(松山ケンイチ)は消えた。咲子とコインランドリーで出会った園田樹生(中島歩)は、同じ事故で妻のあずさ(夏帆)を喪う。

 第1回の時点で園田は咲子に対し、「助け合いませんか。旦那さんが帰ってくるまで」と言った。事故被害者が連帯するのは珍しいことではないが、相手は付き合いの浅い男女2人きりだ。軽い違和感を拭えなかった。しかし、咲子はそれに応じた。

 やはり第1回、園田は咲子に向かって「あなたの夫、僕の妻と不倫してましたよ」と告げた。筆者はこの時点から不倫とは思えなかった。それはさておき、夫が消えたばかりの女性に向かって「不倫していた」と断じるのは残酷すぎる。人間はそんなにやさしくないが、ひどく意地悪でもない。無用に他人を傷つけない。強い違和感を覚えた。

 園田には5歳の一人息子・翔(久保田薫)がいる。なぜか咲子に異様なまでに懐いている。それはいい。そんな子供もいるかもしれない。だが、園田が出会って間もない咲子に翔を預けたことは理解できなかった。まして翔は母親を喪ったばかりだ。第2回のことだ。

 もっと調べるべきだったのは第5回の描写だ。あずさが育った児童養護施設の職員・光江(宮地雅子)が、線香を手向けるために園田宅を訪れたが、あり得ない。施設にいたことを家族にも言えない人がいるから、施設職員は本人の死後であろうが自宅には近づかない。

 充とあずさの関係については、2人を目撃したコインランドリー管理人の言葉が全てではないか。「夫婦ではないけれど、家族みたいな感じ」(第4回)。第三者の目は案外と確かだ。作者の生方美久氏(33)もそのつもりで書いたのではないか。人目につくコインランドリーで会うことを、密会とは言わない。不倫ではないと見る。

 充と咲子の間にはルールがあった。「ウソはダメ。でも、言いたくないことは言わなくていい」。多くの夫婦が共有する不文律だろう。言いたくないことを聞き出しても意味がない。

 おそらく、充とあずさの関係も咲子に言いたくないものだった。それは充とあずさが幼少期に忌まわしい出来事に遭遇したからだろう。

 第5回では充が帰宅した。バス事故から1年が過ぎている。咲子はもう充は帰ってこないと確信し、親密になった園田と一緒に充の私物を整理していた。

 そこで玄関のベルが鳴り、咲子がドアを開けると、充が「ただいま」。咲子は目を見開いたまま、動くことすらできなかった。

 1年ぶりの帰宅で、いきなり「ただいま」と言うだろうか。その理由が第6回で分かることを期待したい。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社。放送担当記者・専門委員として、1994年のNHK連続テレビ小説「春よ、来い」のヒロイン途中交代や、1999年のフジテレビ「愛する二人別れる二人」のやらせ問題などを特報する。2015年に毎日新聞出版へ入社し、サンデー毎日編集次長を務める。編集者としては「小池百合子都知事の真実」などを担当した。2019年に独立。元・放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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