なぜ、なぜ、なぜ、「Tシャツ」に違和感…夏ドラマ、評判と数字のねじれ現象 低視聴率「さよならノワール」は出色
視聴率は低い作品
夏ドラマが中盤に差し掛かりつつある。フジテレビ「さよならノワール」(火曜午後9時)はドラマ制作者からの評判が良いが、視聴率はかなり低い。一方、TBS「Tシャツが乾くまで」(金曜午後10時)はドラマ制作者の間で違和感を指摘する声もあるものの、視聴率は上々である。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】
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【写真】グラビアアイドル時代、まだあどけなさの残る「小池栄子」(20)
制作者の評価と視聴率が一致しないのは、珍しいことではない。個人視聴率の平均値が3.4%だったフジ系「大豆田とわ子と三人の元夫」(2021年)などがそうである。
現在の夏ドラマだと、「さよならノワール」が代表例だ。第1回から最新の第5回までの個人視聴率の平均値が1.6%にとどまっている。16本あるプライム帯(午後7~同11時)の連ドラの中で、毎週10位以下である。
主人公は小池栄子(45)が演じる黒木夏海。1年前まで警視庁西池袋署の組織犯罪対策係に勤務していた凄腕刑事だったが、直属の上司・山崎創(渡部篤郎)の失踪が契機となり、犯罪被害者支援室へ異動させられた。警視庁は山崎の失踪と夏海の関与を疑っている。
夏海は異動と同時期に離婚した。失踪直前の山崎に呼び出されたため、夜中に外出したところ、家に置いてきた娘の夕夏(西島海心)が外へ出て、車にはねられたからだ。夫は仕事を優先した夏海を責め、夕夏を連れて家を出た。
心が擦り切れた夏海が、犯罪被害者やその家族の精神的なサポートをすることになったのだから、皮肉だ。それでも責任感の強い夏海は、「(被害者側にとって)人生で最悪の数日間のパートナーになる」(第1回)と、覚悟を胸に刻む。
これまでに夏海は5人を支えた。うち1人はラーメン店店主の妻(北乃きい)。店主は謎の焼死を遂げた。殺されたらしい。まず妻が疑われた。店の経営がうまくいかず、夫婦はケンカが絶えなかったからだ。
だが、妻は犯人ではなく、強い喪失感を抱えていた。高架橋上で見知らぬ老夫婦とすれ違った妻は、発作的に飛び降り自死を図る。夫と老いるまで一緒に暮らすつもりだったが、それができなくなったという現実を、老夫婦を見て悟ったからだ。ベテランの井上由美子氏(65)による脚本が冴えている。
一方で妻は夫を疑っていた。浮気していたのではないかと思っていた。それも気落ちする理由だった。しかし、夏海は夫が苦しい懐から金を出し、妻に贈る指輪を買っていた事実を突き止める。妻は心に空いた穴が少し埋まり、新たな一歩を踏み出す。
夏海は強くてやさしい。傷心の犯罪被害者が自死しようとするのを、体を張って止め、一方でウソを吐かれてもとがめない。「騙されるのも仕事のうちよ」(夏海)
「ハマリ役ですね。彼女自身も強くて情が深いから」(高校生時代の小池をスカウトしたサンズエンタテインメント会長の野田義治氏)。
この作品における小池は、米国の大物女優のマリスカ・ハージティ(62)と重なる。1999年に始まり、現在も続く米国の大人気刑事ドラマ「LAW & ORDER:性犯罪特捜班」(NBC)でオリビア・ベンソン刑事を演じている女優である。ハージティのイメージもやはり強くてやさしい。
小池は演技力に定評がある。持ち味の強さとやさしさを前面に押し出したら、日本のハージティと呼ばれるようになるのではないか。競合しそうな女優は見当たらない。強くてやさしいイメージを持つ女優は、意外と少ないのだ。
なぜ低調なのか
助演陣も味わい深い。特に面白いのは、大学から黒木の相棒として派遣された臨床心理士の白石絵梨子(北香那)。一見、インテリの優等生なのだが、関わってみると特異性が見えてくる。本人も認めているが、人に好かれない。自意識が強く、他人の気持ちをくみ取るのが苦手だからだ。言葉にも危うさが表れている。
「黒木さん、ありますか、誰かに卵焼きをつくりたかったこと」(絵梨子、第2回)
言葉の並べ方がおかしい。絵梨子の内面の不安定さが伝わってくる。夏海が絵梨子も救うのか、それとも絵梨子が夏海を癒やすのか。興味深い。
それでも視聴率が低い最大の理由は、同じ時間帯にテレビ朝日もドラマを放送しているからだろう。ドラマファンを奪い合っている。録画やTVerで観る人もいるが、あくまで限定的だ。個人の余暇時間は限られている。
テレ朝は現在、今田美桜(29)主演の医療ドラマ「クロスロード ~救命救急の約束~」を放送している。第5回までの個人視聴率は3.5%だから、強いドラマの部類に入る。「さよならノワール」にとっては、厳しい裏番組である。
テレ朝にとっても、フジとドラマが並ぶのは痛い。もっとも、テレ朝が秋ドラマ(10月改編)から放送枠を動かす可能性が浮上している。
テレ朝は秋ドラマで榮倉奈々(38)の主演作を制作する。これを土曜午後10時枠で放送する案がある。この枠には他局のドラマがない。実現したら、両局にプラスがもたらされるのではないか。
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