「顔中血だらけ」「駐車場から車」…発生から31年「ナンペイ事件」を取材した記者が明かす“被害者の知人男性”が語っていたこと

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「覚えていますね」

 7月30日、そう呼びかける立て看板にスマホのレンズを向けてシャッターを切った。東京都八王子市の路上である。1995年のこの日、立て看板の後ろにあったスーパーマーケットでパート従業員の稲垣則子さん(当時47)とアルバイトの女子高生2人が射殺された八王子スーパー強盗殺人事件は、発生から31年となった。報道メディアの警視庁捜査1課担当記者、通称“イッカタン”として、事件直後から現場取材に当たっていた時の取材メモを見返しつつ、今年は事件と同じ日にナンペイ跡地を訪れ、当時を思い出しながら丹念に周辺を歩いてみた。

遺体の第一発見者が当時私に語ったこと

 事件は、八王子で最高気温31度を記録した日曜日の午後9時15分頃に起きた。同市大和田町のスーパー「ナンペイ」大和田店2階事務所で、両手足を粘着テープで拘束された女子高生2人がそれぞれ後頭部を拳銃で1発ずつ撃ち抜かれ、金庫を管理していた稲垣さんは2発の銃弾を浴びて殺害された。犯人は金庫にあった526万円を奪うことなく逃走。金庫が開けられなかった苛立ちからか、金庫にも銃弾1発が発射されていた。

 ナンペイは9時まで営業しており、近くの「北の原公園」では9時過ぎまで盆踊りが行われていたため、後に「銃声を聞いた」と証言した近所の人たちも、事件直後には「花火だと思っていた」と口をそろえ、異変を感じるどころか気にもとめてはいなかった。

 3人の遺体を最初に発見したのは、稲垣さんの友人の男性。男性は同じ大和田町内の飲み屋で、仕事終わりの稲垣さんと落ち合う予定だったため、先に店で待機しており、まさに事件直前とみられる9時15分頃に稲垣さんから「迎えにきてほしい」と電話があったため、飲み屋のママに「迎えに行ってくる」と言い残して、直線距離で600メートルほどのナンペイに車で向かった。

 9時25分には店の南側にあった駐車場に入り、店舗裏外階段2階のドアから稲垣さんが出てくるのを待ったが、しばらく待っても出てこなかったため、稲垣さんが着替え中の可能性もあるとして飲み屋に戻り、女将ととともにナンペイに向かい、同50分にスーパー裏手へ再び到着。女将が外階段のドアを開け、2人で中を確認したところ、3人の遺体を発見した。男性はナンペイからも飲み屋からも車でわずか3分程度の場所にある一戸建てに住んでいた。

 事件直後は現場のあまりの凄惨さから、怯えてマスコミの取材をシャットアウトしていた。だが私は実は、事件の数日後に自宅のインターホン越しながら男性の肉声を聞くことができた。男性は既に鬼籍に入っているが、31年が経ったこの日、再び家の近くに足を運び、資料の山から探し出した当時のメモを見返しながら記憶を呼び起こしてみた。

「顔中血だらけ」「何秒も見れてない」「言えない」……。

 聞き取った言葉を書き取ったメモである。最も大事な遺体発見の場面は、あまりの恐怖心から、そんなにしっかりとは見ることができなかったという点と、警察から口止めされているといった主旨のことを言っていたことが思い出される。

生きていれば向かうはずだった場所は今

「駐車場から車」「ライトが目に」「色不明」

 そんな殴り書きもある。最初にナンペイに着いた時、しばらく待つ間に何か気が付いたことがなかったか、繰り返し聞いたことに対して、最初は言うのをためらっていたようだった男性は「関係ないと思うけど」と前置きした上で、駐車場から1台車が出ていくのは見ていたことを証言したのだ。前照灯が目に入って眩しかったからよく覚えているとしたが、暗がりではっきり色は分からないとした。

 ただ「白?」ともメモにあり、「白っぽかったと思う」と言っていたことを思い出す。また、「ホントに酒飲んでない?」というメモも残る。男性は飲み屋で待機していて、車で稲垣さんを迎えに行っていたが「お酒は飲んでない」「飲酒運転はしてない」と話していた。飲み屋の雰囲気が好きなだけで、酒は飲まないという主旨のことも話していた。

 ただ当時は、現在と比べると飲酒運転には鷹揚な社会風土が、まだ少し残っていたように思う。私が事件の前年まで住んでいた地方都市には、乗用車が30台は停められるパーキングを備え「駐車場あります」などと看板を掲げた居酒屋もあった。この記事を読んでいる平成生まれのネットユーザーには信じられないような話だと思うが、実際にそういった居酒屋があったのだ。それだけに、稲垣さんを車で迎えに行った男性が「お酒は飲んでいない」と証言したことに「?」とメモをしていたと記憶している。遺体発見時、第一発見者と一緒にいたママにも当時、直撃取材したが、ノーコメントだった。ママの飲み屋があった場所にも、今回、足を運んだが、もちろん店はもうなかった。ただ店が入っていた建物がそのままだったのには、少し驚いた。男性宅の周囲は雰囲気がずいぶんと変わっていたし、スーパー自体はもちろん跡形もなく、現場周辺もかなり様変わりしているだけに、タイムスリップしたように感じたからだ。

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