「顔中血だらけ」「駐車場から車」…発生から31年「ナンペイ事件」を取材した記者が明かす“被害者の知人男性”が語っていたこと

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捜査の“切り札”はまだなかったが……

 昨年の夏、久しぶりに現場へ戻った私は、デイリー新潮でレポートを書いた。ただ、昨年は事件から30年の節目だったために、スケジュールを縫って時間をつくり、7月30日前後に短時間ながら足を運んだだけだった。今年はもっと時間をかけて当時を思い出そうと、事件のあった当日に再び足を運び、あの日あの時のように取材の足跡をトレースしてみた。

 ただそこで、私はミスを犯していたことに気付いた。昨年のリポートでは「ナンペイの建物も来客用駐車場も、銃声をかき消してしまった盆踊りが行われていた公園も、全て月極駐車場へと様変わり」と書いたが、北の原公園は記憶していた場所ではなく、道路の反対側に位置していて、今も残っていたのだ。

 読者をミスリードしてしまい、記者として確認取材の甘さを恥じる一方で「やはり記憶なんてあてにならないな」と改めて思い知らされた。そう思うと「覚えていますね『見たこと』『聞いたこと』『気になること』……」と、朱色で強調した立て看板の空虚さを痛感した。

 思い起こせば、警視庁管内ではこの年、警察庁長官銃撃事件があり、未解決のまま。前年の4月には、井の頭公園で男性の体が27分割された遺体片で発見された猟奇的なバラバラ殺人が起きたが、やはり未解決のままだ。またナンペイ事件翌年の9月に発生した、葛飾・柴又でアメリカ留学を直後に控えた女子大生が殺された殺人放火事件も未解決となっている。

 ナンペイで殺害された高校2年生の矢吹恵さん(当時17)が通っていた桜美林高校では今年も礼拝が行われ、礼拝後に同校の女性教諭が「今年こそと解決を願い続けて31年という月日が流れてしまった」との有志からのコメントを代読した。

 現在、犯罪捜査現場の最前線にはDNA型鑑定と防犯カメラという“切り札”がもたらされ、重要未解決事件は激減した。一方で、井の頭公園で遺体の一部が捨てられていたゴミ箱や、警察庁長官の銃撃事件との関与が疑われた放置自転車があった現場、柴又の事件現場に駆け付けた時の小雨交じりの空模様など、断片的に残る記憶はいずれももはや鮮明とはいえないものばかりだ。ナンペイ事件は、目撃者の記憶に訴えるしか、もう残された捜査手段はないのだろうか。

岡本純一(おかもと・じゅんいち)
ジャーナリスト。特捜検察の捜査解説や検察内部の暗闘劇など司法分野を中心に執筆。月刊誌「新潮45」(休刊中)では過去に「裏金太り『小沢一郎』が逮捕される日」や「なぜ『東京高検検事長』は小沢一郎を守ったか」などの特集記事を手掛けた。

デイリー新潮編集部

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