「前のめり厳禁」「退団公演は白い服で観劇」…FNS歌謡祭で話題の宝塚、初心者が知っておきたい”暗黙の独自マナー”とは

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トップスターを決定づける圧倒的オーラと男役芸

 宝塚の象徴である「トップスター」。単に歌やダンスが上手いだけでは辿り着けない、独特の基準が存在する。

「下級生の頃から『何か違う』と感じる輝きやオーラがあります。元花組トップの明日海りおさんや元星組トップの北翔海莉さんも、下級生時代からとにかくキラキラしていて自然と目が行く存在でした。人を惹きつける華や存在感がまずは必須ですね」(レイさん)

 一方、慎さんも、その神聖さに魅了されたひとりだ。

「現実には存在しえない『理想の男性像』を具現化したのが男役。難役に必死で挑み、貪欲に芸道を深めて突き抜けていく。その自信がオーラとなり、二番手、三番手からトップへと登り詰めていく姿は、ビジネスパーソンが組織で出世していくプロセスとも重なり、深い感銘を受けます」

 また、運やタイミングの要素も欠かせないと前出のKさんは指摘する。

「会社や役所の人事と同じで、たまたま年次が近い学年にトップ候補者がいたりすると、トップになるに十分な資質や経歴を備えていても、なれない場合も。それだけに、トップスターの陰にある複雑な巡り合わせを思うと一層、特別な感慨が湧きます」

退団公演だけにある「白」の装いとファンの伝統

 観客の装いにも文化がある。帯の厚みのせいで前のめりになりがちな着物には注意が必要だが、着物そのものがマナー違反というわけではない。公演にちなんだ装いを楽しむ観客もいる。

「和物の作品では着物姿の方をよく見かけますし、『黒蜥蜴』の時には全身黒の服装の方を何人も見ました。ご贔屓さんが舞台で特徴的な色や柄の衣装を着ていた時には、それをどこかに身につけて観劇される方もいらっしゃいましたね」

 象徴的なのが、退団者の私設ファンクラブの会員らが、千秋楽前後にお揃いの白い服でスターを送り出す光景だ。もちろん、一般の観客まで白を着る必要はない。文化を知らなかった慎さんは、上下黒で出かけたところ、周囲に白い会服の一団が多く、「自分だけ浮いて見えた」と苦笑する。

「客席は女性が多いですが、男性も若い方から年配の方まで幅広く楽しんでいます。思いきり非日常の世界に浸ってください」(慎さん)

 一見すると独特な作法があるように感じられるが、劇場で求められるのは、ほかの観客の視界や鑑賞を妨げないという基本的な配慮だ。一歩踏み出せば、日常の喧騒を忘れさせてくれる華やかな世界が待っている。この夏、魅惑の「宝塚沼」を覗いてみてはいかがだろうか。

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