プロ野球の実況アナは試合がない日も“資料作り”をサボれない…“緊迫した投手戦”こそスポーツアナの真価が問われる“備え”の重要性

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手書きは私だけ

 ところで私の知る限り、名古屋のスポーツアナウンサーで未だに資料をノートに手書きしているのは、実は私一人なんです(他の人たちはみんなパソコンにデータを入れていました)。

 自虐的に「絶滅危惧種」と自称していましたが、なぜ私が手書きにこだわるかというと、なにかグラウンドで起こったときに、とっさにそのプレーなどに関するデータを見ようと思ってもパソコンではいくつかの手順を踏んで画面に表示しないといけませんが、ノートであれば、どこに必要なデータが記入してあるかわかっているので、そのページをめくればすぐにデータを見ることができるからです。

 パソコンを普通に使いこなせる人からするといかにも「前時代的」なやり方でしょうが、社会に出た40年近く前、私が入社した東海ラジオにはパソコンは経理に1台しかなかったような環境にいたため、パソコンを使うこと自体が一からの勉強だった私にはこれが最善の方法なのです(何とか時代についていこうと思いながらも、スキルが追いつかない自分への言い訳かもしれませんが……)。

 前述したとおり、準備した資料は一部しか紹介しないまま中継が終わることが多い中、資料が最大の威力を発揮する試合があります。

 それは「投手戦」です。

 両チームの投手が好投してチャンスすら作らせない試合展開は、動きが少ないだけにグラウンドだけを追っていると単調な中継になってしまいます。また、解説者も試合開始当初は投球の内容などについて語ってくれますが、イニングが進むにつれ「いいピッチングですね」くらいしか言うことがなくなってきます。こんなとき、準備した資料をもとに投手戦にまつわる様々な数字を紹介することで会話を広げることができるのです。

 とはいえ、これほどの投手戦は年一回あるかどうかです。でも「備える」、それがスポーツアナウンサーという生き物なのです。

村上和宏(むらかみ・かずひろ)
フリーアナウンサー。1967年、広島県出身。専修大学法学部卒業後、91年に東海ラジオ放送入社。制作局アナウンサーとして、主にスポーツ実況を担当。2025年の退社まで、プロ野球をメインに多くの番組制作に携わった。現在、バンテリンドームナゴヤのDAZNドラゴンズ戦実況、「プロ野球ニュース」(フジテレビONE)などに出演中。

デイリー新潮編集部

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