日本が主導する「次期戦闘機」が世界を席巻…“独仏の挫折”を尻目に日英伊の「F3計画」がひとり勝ちする理由
「ドイツ合流」という罠
こうして見ると、FCASが崩壊したことで、GCAPが「ひとり勝ち」の状況を謳歌しているように見える。だが、日本政府の顔色は、明るさばかりではない。順風満帆に見える計画の背後で、新たな、そして、少々厄介な懸念が浮上しているからだ。それが、欧州独自の戦闘機開発の道を絶たれたドイツの「合流問題」である。
イギリスやイタリアには、資金力を持ち、欧州防衛の中核を担うドイツのGCAPへの参加を期待する声が少なからず存在する。しかし日本側は、これに強い警戒感を抱いている。ある防衛省幹部は「仮にドイツがGCAPに参加する場合は、完成機の購入だけでなく、開発への参画も希望するだろう」と予測する。そして、もしドイツが開発の意思決定プロセスに加われば、これまでの3カ国体制における絶妙な生産分担とスピード感が根底から崩れ去る危険性があるのだ。
開発への参加国が増えれば増えるほど、各国の機体への要求は複雑化し、意思決定は遅れる。「船頭多くして船山に登る」状態に陥れば、それこそ、崩壊したFCASと同じ轍を踏むことになる。前述の通り、日本には「2035年配備」という譲れないデッドラインがある。防衛装備庁内では、開発期間を短縮するために試験用の機体を増やして複数の試験を同時進行させる案まで浮上しているほど、スケジュールは逼迫しているのだ。もしドイツの参画によって、結果的に計画が数年でも遅延すれば、日本の防空能力に致命的な「穴」があき、増強を続ける中国の航空戦力に対して圧倒的な劣勢に立たされることになる。
日本政府内では、今秋に調整が進められている日独首脳会談において、ドイツ側からGCAPへの合流について「何か言われるのではないか」(別の防衛省幹部)との懸念さえ出ているのだ。
欧州の夢であったFCASが、参加国のエゴの衝突によって崩れ去り、奇しくも日本主導のGCAPが西側世界における次世代戦闘機のグローバル・スタンダードになろうとしている。しかし、それは同時に、各国の思惑と利権がGCAPに集中することを意味する。世界の防衛市場を席捲する可能性を秘めた「F3」の命運は、今や機体の性能だけでなく、忍び寄る各国のエゴをいかにコントロールし、2035年という期限に間に合わせるかにかかっている。真の「ひとり勝ち」を実現できるかどうか、日本政府のしたたかな外交手腕とリーダーシップが、今まさに問われている。



