日本が主導する「次期戦闘機」が世界を席巻…“独仏の挫折”を尻目に日英伊の「F3計画」がひとり勝ちする理由
高市首相の「直談判」
FCASの自滅により、西側諸国において、「実現可能性の高い唯一の第6世代戦闘機計画」として残ったのが、日英伊によるGCAPである。だが、数か月前までGCAP陣営も、決して手放しで喜べる状況にはなかった。共同開発の屋台骨を揺るがしかねない「暗雲」、すなわちイギリスの深刻な財政難による資金枯渇の危機が迫っていたからだ。
今年4月、日英伊3カ国政府による国際機関「GIGO(ジャイゴ)」は、次期戦闘機の設計・開発を担う合弁会社「エッジウィング」(日本の三菱重工業などが参加するJAIEC、英BAEシステムズ、伊レオナルドが出資)と最初の契約を締結した。しかし、イギリス側が長期の資金拠出額を確定できなかったため、6月末までの3カ月間の短期契約という、不安定な「見切り発車」に留まっていたのだ。
このイギリスの足踏みに対し、最も強い危機感を抱いていたのが日本である。そこには、日欧間における「切迫度の温度差」が存在する。英伊の主力戦闘機であるユーロファイターの退役が「2040年代前半」からであるのに対し、日本の航空自衛隊が運用するF2戦闘機は「2035年」から順次退役が始まる見通しだ。F2は現在、百里基地(茨城県)と築城基地(福岡県)に拠点を構え、対領空侵犯措置などを担う日本の防空力の要である。
F2の後継となる次期戦闘機「F3」の開発・配備が遅れれば、老朽化したF2を延命させるための莫大な追加投資が必要となるだけでなく、日本の防空体制に致命的な「穴」が空く。中国が第5世代のステルス戦闘機「殲20(J20)」の量産と配備を急ピッチで進めるなか、「GCAP(=「F3」開発計画)は1年の遅れも許されない」というのが防衛省の偽らざる本音である。
だからこそ、日本政府はトップ外交という最大のカードを切った。6月14日、G7サミット出席を前にロンドンを訪問した高市早苗総理大臣は、イギリスのスターマー首相(当時)との日英首脳会談に臨み、GCAPに向けた長期の資金拠出の確約を直接働きかけたのである。
このトップ会談が功を奏し、事態は一気に動く。7月3日、GIGOとエッジウィングは、2027年度末までに約1兆円の開発資金を投じる長期契約を締結した、と発表した。今後は、戦闘機に盛り込む機能を絞り込み、2035年の配備を目標とする本格的な開発段階に入る。まさに薄氷を踏む思いで「2035年のデッドライン」を死守する体制が整ったのである。
押し寄せる「オブザーバー国」
長期契約にこぎ着けたことで、GCAP陣営は開発と並行してセールスにも目を向け始めている。巨額の開発費を回収し、量産効果で一機あたりの単価を下げるためには、輸出先の開拓が急務だからだ。その第一弾として白羽の矢が立ったのが、カナダである。
7月20日からイギリス南部のファンボローで開催された国際航空ショーにあわせ、小泉進次郎防衛大臣が現地を訪問した。翌21日には、日英伊カナダの4か国国防相会談が行われ、GCAPにオブザーバーとしてカナダが加わることが正式に発表された。小泉大臣は会談後、「同志国連携のネットワークを拡大するものだ。第三国との協力も視野に入れながら、日英伊で緊密に連携していくことを確認した」と力強く述べている。
オブザーバー制度とは、将来の機体購入を前提に、秘密保全義務を課した上で、開発段階から随時、次期戦闘機の性能や開発企業の枠組みに関する情報を共有する仕組みである。カナダは自国で開発費を負担することなく次期戦闘機の調達を検討でき、日英伊にとっては量産機が完成する前から将来の有望な輸出先を囲い込めるという、双方にメリットのある枠組みだ。次期戦闘機の開発には巨額の費用が必要で、販路の広がりは、日英伊にとって、将来、費用負担を削減できるメリットがあるのだ。さらに日本側からすれば、同志国のカナダとの安全保障における協力関係を深める契機になるという期待もある。
関心を寄せているのは、カナダだけではない。GCAPを統括するGIGOトップの岡真臣氏は、「10カ国超が開発の状況に関心を示している」と話している。FCASの枠組みの一員だったスペインや、オブザーバー参加していたベルギーが早くもGCAPへの関心を示したのをはじめ、インド太平洋地域からはオーストラリアやシンガポール、さらには、北東欧のスウェーデンやポーランドなども関心を持つとされている。そして、導入する国が増えれば増えるほど、自衛隊との共同訓練や、維持・整備面での協力が円滑になるという利点があるのだ。
GCAPは、アメリカのロッキード・マーティン社製の第5世代戦闘機、F22やF35を超える第6世代戦闘機という位置づけである。第6世代機の場合、機体そのものの運動能力だけでなく、周囲に展開する複数の無人機(ドローン)をAIで統制する「チーミング」能力が決定的に重要であり、その性能を決定づける。日本陣営は、将来的に300機規模と見込まれる導入機数を生かし、このデータ連携時代において世界市場で先手を打つ構えだ。
背景には、同盟国であるアメリカの「戦闘機覇権」の後退もある。トランプ政権は次世代戦闘機「F47」の開発を公表したものの、そのアメリカ・ファースト(自国第一主義)への不安から、同盟国などとの具体的な協議は一向に進んでいない。東アジアや欧州の安全保障に対するアメリカの関与が相対的に低下するなか、中露の軍事的脅威に対抗するためには、米国への依存を減らしつつ同志国間で防空能力強化の負担を分かちあう、次世代戦闘機の共同開発が、まさに時代の要請となっているのだ。
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