著名人の訃報、公式発表を待てないSNS投稿はなぜ問題なのか 山田五郎さんの死をめぐる教訓

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不正確な情報も

 公式発表前の投稿が厳しく批判される最大の理由は、彼らの気持ちを第三者が踏みにじることになってしまうからだ。また、不正確な情報が拡散してしまうリスクもある。報道機関であれば、情報源を確認し、遺族や所属事務所に取材し、発表時期や公益性を検討する。

 ところがSNSでは「自分が直接聞いた」「親しい人物だから間違いない」という確信だけで、発信までの手続きが省略されやすい。その意味でも情報発信には慎重な姿勢が求められる。

 もちろん、関係者に明確な緘口令が伝えられていなかった可能性もあり、根拠もなく投稿者を過度に攻撃することは慎むべきである。ただ、現代のSNS利用者、とりわけ一定の知名度やフォロワー数を持つ人物には、自分の投稿には一定の責任が求められるという認識が必要であるとは言える。

 訃報、病状、結婚、離婚、妊娠、事件や事故といった情報は、本人や家族の人生に直接関係している。自分が当事者でない情報については、原則として公式に発表されるまでは他人が勝手に明かすべきではない。これは他人の人生の主導権を尊重するための最低限の配慮である。

 山田五郎さんは、テレビやYouTubeでは博識をひけらかすことなく、難解な美術や文化の話をユーモアとともに伝えられる稀有な人物だった。彼には知ることの面白さを視聴者と共有する姿勢があった。

 自身のYouTubeチャンネルでも、専門知識を開かれた教養へと変換し、多くの人に届け続けた。その死が大きな衝撃を与えたのは、彼が単に有名人だったからではなく、視聴者が山田さんを「自分に知識を授けてくれる身近な先生」のように感じていたからだろう。

 闘病生活に入ってからも、動画を更新し続けて、明るくユーモアを交えて前向きに情報発信を続けていた。服装や話し方や態度からにじみ出る「品の良さ」こそが、彼の大きな魅力だった。

 公式発表を待たずに訃報を公表してしまうというのは、端的に言えば「品のない」行為であり、山田さんの生き様とは最も遠いところにある。だからこそ、そのような投稿者に対して強い反発が起きたのだろう。山田さんへの追悼には、彼自身が最後まで失わなかった節度と品位が必要だったのではないか。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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