大人も海外勢の心もつかむ「ちいかわ」の残酷な魅力 40代“ちいかわオジさん”が徹底解説します
台湾、韓国、そして中国も「胸に刺さりながら心温まる」
作家の村上春樹はエッセイの中で、暮らしの中にある小さいけれど確実な幸せのことを「小確幸」と名付けたが、ちいかわの物語は世界の残酷さを描くことで、この「小確幸」がより浮き彫りになっている。ちいかわは日本社会で働く我々の映し鏡と言える。だから大人こそ共感を覚えずにはいられず、男女問わず広い世代の心を打つのだ。
村上春樹が使った「小確幸」は、日本ではそこまで浸透していないが、台湾、中国や韓国といった東アジアの国々では流行語にもなった。そして面白いことにこれらの国では「ちいかわ」が大人気なのだ。ちいかわのコラボグッズが発売となれば、日本以上の激しい争奪戦が繰り広げられている。
台湾のエンタメメディア「噓!星聞」は2024年の記事の中で、ちいかわの世界を「人生の縮図」と評した。生活のために働かねばならず、努力が必ず報われるとも限らない。自分とはまるで違う姿の生き物が、それでも同じ現実に向き合っている姿に読者は共感し、心を救われるのだという。韓国の経済紙「アジア経済」も2023年の記事で、討伐を終え、受け取った報酬でうまいものを食べて一日を締めくくる姿を「まさに社会人そのもの」と書いている。
そして2024年、中国の人民日報は、中国のちいかわ人気についてこう書いている。
「無邪気な顔をした小動物たちも、労働で生計を立て、狭い部屋に住み、試験に落ちるといった現実からは逃れられない。しかし彼らは楽観と勇気、そして友情をもって、それを数々の小さな幸せ(小確幸)へと好転させていく。この、胸に刺さりながら心温まる設定が、多くの若者の感情的な共感を呼んでいる」(筆者訳)
このように東アジア各地のメディアも、懸命に働いて、だが報われないことも多く、それでも小さな幸せを見つけるちいかわの物語が人気の理由だと評している。ちいかわは日本社会の映し鏡であると同時に、東アジアに生きる我々の映し鏡でもあるのだ。
国を問わない共感は、性別も超えるということなのだろう。2022年10月~2023年9月に行われたヴァリューズ「Dockpit」の検索ログ調査によれば、ちいかわを検索したユーザーの内訳は男性約35%、女性約65%だった。これは「おぱんちゅうさぎ」「コウペンちゃん」などほかのキャラクターと比較した中で、ちいかわは最も男性比率が高いという結果である。同様に男性ファンが多いことは中国や台湾などでも報じられている。かわいさによる癒やしだけでなく、働いても報われないことのある社会で、それでも日々を生きていく者たちの共感に満ちているからだ。
ちいかわはかわいいから愛されているのではない。かわいい彼らが、我々と同じ現実を生きているから愛されているのだ。
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【記事後編】では、“観客を無傷では帰さない”公開中の劇場版について解説している。




