プロで伸びる選手、消える選手は何が違う? データ全盛時代に問われる「自己修正力」
投手以上に厳しい打者
データは、見るだけでは意味がない。
数値から課題を把握し、自分の感覚と照らし合わせながら、フォームや球種を修正する。改善を繰り返せるかどうかで、成長の度合いは大きく変わる。数字の良し悪しだけでなく、なぜその数値が出たのかを考えられる選手ほど、修正の精度も高くなる。
篠原は、成長の場を自ら求めた。『FRIDAYデジタル』の報道によると、オフにチームメイトである平良海馬との自主トレへの参加を自ら志願し、データを活用した投球練習にも取り組んだという。高校時代から大きく球速を伸ばしただけでなく、新たな球種の習得にも積極的で、専門家に数値を確認してもらいながらボールを磨いていった。
誰かに言われて練習方法を変えたのではない。自分に何が足りないのかを考え、必要な知識や技術を持つ相手のもとへ出向いた。プロでは球団から多くの情報や設備が与えられるが、待っているだけで成長できるとは限らない。
野手に目を向けると、投手以上に難しい時代に突入している。現在のプロ野球における「投高打低」が、それを端的に示している。
昨シーズン、規定打席をクリアして打率3割以上の数字を残した選手はわずか3人。今シーズンも7月23日終了時点で、3割打者はレイエス(日本ハム)、佐藤輝明(阪神)、近藤健介(ソフトバンク)の3人となっている。
背景には、投手のレベルアップとデータ分析の進歩がある。厳しい環境の中で結果を残しているのは、どんな選手なのだろうか。
「昔も今も、打者に得意なコースや球種があることは変わりません。現在は分析できるデータが多くなったことで、弱点が分かると徹底して攻められるようになりました。また、打球方向についても分析が進み、野手の間を抜けるヒットも少なくなっています。そうなると、どうしてもヒットの確率が低くなるのは当然でしょう。それでも結果を残せる打者は、相手に合わせてスタイルを変化させられる選手だと思います。方法はいくつかあり、フォームを作り替えるのも一つですし、苦手なボールを捨てて狙い球をうまく絞るやり方もあります。レベルが上がってくると失投は当然少なくなりますから、打てるコースを増やすことはどうしても必要になってくると思います。打撃は特に投球への対応動作で、目や神経も影響してくるので、より難しい時代になっていることは確かだと思いますね」(前出のアナリスト)
どの課題を解決するために変えたかが重要
投手は、自分の投げるボールを変えることで課題に対応できる。だが、打者は相手投手が投げてくるボールに対応しなければならない。投手ごとに球速も軌道も異なり、試合中に配球が変わることもある。フォームを固めるだけでなく、攻め方に応じて狙い球やタイミングを変える対応力が欠かせない。
苦手なボールを、すべて打てるようにする必要はない。打ちにくい球を見極めて振らず、自分が打てる球を確実に仕留めることも大切になる。
打てるコースを広げる技術。苦手な球を見送る判断。相手の攻め方が変わった際の再調整。現在の打者には、この三つが高いレベルで問われている。
打者の場合、シーズン中に形を変える決断も求められる。昨シーズン、パ・リーグで新人王を獲得した西川史礁(ロッテ)が、その好例だ。
西川は昨シーズンの開幕当初、なかなか結果が出なかったが、それまでのフォームを一から見直して作り替え、夏場以降に一気に成績を伸ばした。
パ・リーグ公式メディア「パ・リーグインサイト」が、データスタジアムのデータを基に分析した記事によると、打撃改造後は変化球のボール球に手を出す割合が低下したという。空振りやファウルが減り、インプレーになる打球が増えたほか、変化球に対する成績も向上した。
フォームを変えた事実よりも、どの課題を解決するために変えたかが重要である。結果が出ないからといって、すべてを変えれば、それまでの長所を失いかねない。西川は従来の形をすべて崩すのではなく、自分の良さを残しながら弱点への対応力を高めた。
[2/3ページ]


