「闇バイト」という言葉の発案者は私です…「ルフィグループ」元最高幹部が明かす組織の実態 「50万円で売られてくるホストの女性客」「はした金で手なずけた弁護士」も

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暗躍する「ハト弁」

「ルフィ」を名乗っていた今村磨人被告が、面会に訪れた弁護士の携帯電話を通じて、フィリピンにいるJPドラゴン幹部と通話していたことは2023年に大きなニュースとなった。この面会時の通話によって、幹部は今村被告に口止めしていた疑いもある。栗田氏が文通や面会取材を続けていた小島智信被告も、“お抱え弁護士”の存在を明かしたという。

「小島被告によれば、組織は何人もの“ハト弁”を抱えていたそうです」

 ハト弁とは、身柄を拘束されている人間に外部から連絡を取る際、“伝書鳩”のように利用される弁護士を指す。

「無理な依頼をする時は50万円、伝言程度なら10万~20万円くらいだと。“若い弁護士はいま稼げないから”と、足元を見るような言葉を聞かされて。嫌な話だなと思いました」

 逮捕前は、特殊詐欺や広域強盗に手を染める末端の実行役に対して、そして逮捕後も稼げない弁護士に対して、安価な報酬をチラつかせて意のままに操る……。幹部の狡猾さは一貫している。

 翻って日本側では、なぜ今も、若者たちが報酬目当てに闇バイトへ加担してしまうのだろうか。

「ルフィ事件が派手に報じられていた頃と、現在とでは、少し状況が変わってきていると思います。カンボジアで中国系グループが摘発され、誘拐に近い形で海外に連れて行かれるケースが発覚する一方、栃木で16歳の少年4人が関わった強盗殺人事件のように“先輩・後輩・友人”といった従来型の人間関係を通じた犯罪が復活してきている印象があります」

TikTokしか見ていない人たち

 加えて栗田氏は「闇バイトに応募するなかで、“数百万とか数千万にのぼる借金があって、やむなく……”という人は聞いたことがないんです」とも言う。たしかに、法律的な知識に通じていなくても、闇バイトに応募して身分証の写真を送ることが危険なことは分かりそうなものだが……。

「実際は、犯罪に加担する意識すらなく、むしろコンビニや飲食店のバイトに応募する感覚の人も少なくないと思うんです。彼らはおそらくネットニュースすらも見ていない。テレビや新聞なんて以ての外で、目にするのはSNS、特にTikTokくらいではないかと」

 テレビや新聞はおろか、Yahoo!ニュースすら見ておらず、情報源はTikTokだけ――。当然ながら、闇バイトの危険性や、逮捕された犯人の末路など知る由もない。そんな若年層の実態を挙げ、「ゼロから倫理観を説くのには限界がある」と栗田氏は指摘する。

 そして最後に、こんな鋭い警句も。

「たとえばSNSで高級腕時計を自慢している人間がいるとします。その人物の情報がターゲットとして“売られる”ようなケースは今後、さらに増えると思います。また、ヤフコメなどで“騙される方がバカだ”“全員死刑にしろ”などと書き込んでいる人は気を付けた方がいい。騙されないと高をくくっている人ほど、実は騙されやすいと彼らは言います。僕自身、“成田空港の警察”を名乗る電話を受けた際“これ詐欺だよな”と思いつつも、移動履歴などの細かい情報を提示され、妙な説得力に焦った経験がありますから」

「闇バイト」というキャッチーな呼称そのものが、軽い気持ちでの応募を助長しているのではないか、と栗田氏は苦言を呈する。小島被告は、栗田氏に宛てた手記で、自分こそが“闇バイト”という言葉を生み出したのだと記している。

〈そして私が世の中に闇バイトと言う言葉を浸透させて日本の治安を悪化させました〉

 小島被告はフィリピンにおいてリクルーターとしてSNSで日本の実行役を集めていた。こうした呼称が、応募者の罪悪感を軽減させることにつながったとしたら、罪深いことだ。

 前編【「大変だったんじゃないですか?」 被害総額60億円「ルフィグループ」元最高幹部の意外すぎる“ねぎらいの言葉”…“恋愛漫画”を読み“スイーツ”を好む凶悪犯の素顔とは】では、狡猾かつ残忍な事件からは想像もつかない元最高幹部の素顔を詳報している。

 さらに、「新潮QUE」で公開中の関連記事【【音声あり】ルフィ事件の裏側、話します。『檻の中のルフィ 闇バイトを生んだ者たち』栗田シメイ】では、栗田シメイ氏と高橋ユキ氏の対談音声のフルバージョンを公開中。新時代の犯罪組織「ルフィグループ」の闇について、さらに深く詳しく掘り下げている。

栗田シメイ(くりた・しめい)
ノンフィクションライター。1987年、兵庫県生まれ。広告代理店勤務、ノンフィクション作家への師事、週刊誌記者などを経てフリーランスに。南米・欧州・アジア・中東など世界40カ国以上でスポーツや政治、経済、事件、海外情勢などを幅広く取材する。 著書に『コロナ禍を生き抜く タクシー業界サバイバル』『ルポ 秀和幡ヶ谷レジデンス』。新著『檻の中のルフィ 闇バイトを生んだ者たち』が発売中。

高橋ユキ(たかはし・ゆき)
ノンフィクションライター。福岡県出身。2006年『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』でデビュー。裁判傍聴を中心に事件記事を執筆。著書に『木嶋佳苗劇場』(共著)、『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』、『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』など。

デイリー新潮編集部

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