「大変だったんじゃないですか?」 被害総額60億円「ルフィグループ」元最高幹部の意外すぎる“ねぎらいの言葉”…“恋愛漫画”を読み“スイーツ”を好む凶悪犯の素顔とは
“事件の全貌解明”ではなく
とはいえ、書籍が完成し、拘置所の小島被告のもとに届いたと知ったとき、栗田氏はいささか身構えたという。家庭環境など、プライベートに深く踏み込んだ内容も多く書いているからだ。
「罪のなすりつけ合いや責任転嫁の部分も全部書いているので、何か言われるかなと思っていた」
しかし苦言が返ってきたのは、家庭環境に関する記述についてのみ。事件の核心部分の描写については“むしろ、大変だったんじゃないですか”と労いの言葉さえあったという。
そんな本書では、フィリピン側の幹部が特殊詐欺組織を構築し拡大させてゆくプロセスや、摘発によってビクータン収容所に移り、“新たな収益”獲得のため広域強盗に乗り出すまでの背景など、フィリピン側の実態が事細かに綴られている。とはいえ、特殊詐欺に関与していた者たちへの取材で困るのが、その証言の取り扱いだ。いわゆる“詐欺師”たちの証言をどう裏取りしたのか。
「かなり大変でしたし、100%できているとは僕自身思っていないんです。というか100%はもう絶対に無理だと」
裁判の証拠調べでさえ、テレグラムの復旧データやエクセルの記録、そして重い口を開いた関係者らの証言が頼りだったという実情がある。栗田氏は取材対象者に同じ質問を何度も繰り返し、他の関係者への丹念な裏取りを重ねながらも、そもそもの執筆の目的を「事件の全貌解明」ではなく「事件の渦中にいた人間が何を考え、どんな心理状態で犯行に及んだかを描くこと」に置いたと明かす。
「だから被告の生い立ちや、フィリピンに渡ってからの動向、末端のかけ子にまつわるエピソードも、本作にはかなり細かく入れています」
600枚超の資料と格闘した校閲作業には、通常より大幅に長いスケジュールが組まれた。「資料を渡されたら、絶対やりたくないと思いますよ」と栗田氏は笑うが、その執念こそが本作のリアリティを支えている。
後編【「闇バイト」という言葉の発案者は私です…「ルフィグループ」元最高幹部が明かす組織の実態 「50万円で売られてくるホストの女性客」「はした金で手なずけた弁護士」も】では、幹部たちの“金の使い道”や、フィリピンという国が犯罪をどう助長したのか、そして今なお増え続ける“闇バイト”の構造的な問題に迫る。
さらに、「新潮QUE」で公開中の関連記事【音声あり ルフィ事件の裏側、話します。『檻の中のルフィ 闇バイトを生んだ者たち』】では、栗田シメイ氏と高橋ユキ氏の対談音声のフルバージョンを公開中。新時代の犯罪組織「ルフィグループ」の闇について、さらに深く詳しく掘り下げている。




