圧倒的な軍事力を持つロシアはなぜ“4年半が経っても勝てない”のか…プーチン大統領が潰した「軍改革」千載一遇のチャンス

国際

  • ブックマーク

 第2回【激化する報復合戦「プーチン大統領」は“亡国の最高司令官”となるか? ウクライナ侵攻でも露呈するロシア軍の“不名誉な伝統”とは】からの続き──。ロシア軍では軍幹部が率先して汚職に手を染め、予算の横領や物品の横流しが常態化している。何しろ戦車でさえ必要な部品が欠けているのは当たり前だという。開いた口が塞がらないが、これではウクライナ軍に苦戦して当然だろう。しかし強大な権力を持つ独裁者であるプーチン大統領は、なぜ汚職まみれの軍幹部を“粛清”しないのかという疑問が浮かぶ。(全3回の第3回)

***

 軍事ジャーナリストは「プーチン大統領は、世界有数の諜報機関だった旧KGBの工作員でした。大統領になった今でも様々な情報・諜報ネットワークを張り巡らせており、軍部における汚職の実態も正確に把握していると考えられます」と言う。

「ところがプーチン大統領は証拠を握っていても軍幹部を処分しないのです。理由は幹部を掌握するためです。独裁者にとって反乱ほど怖いものはありません。そして軍人は武器を使えますから、政府中枢の政治家や官僚よりはクーデターの準備も容易です。そこでプーチン大統領は幹部を『汚職の証拠は握っているぞ』と脅し、『俺の言うことを聞けば見逃してやる』と取引を持ちかけるのです。そのため若手軍人の出世頭が抜擢された場合、幹部が“汚職グループ”に招き入れることも珍しくありません。こうした対処法はプーチン大統領の権力基盤を万全なものにするかもしれませんが、軍のガバナンスが大きく毀損されるのは言うまでもないでしょう。これではロシア軍が『精鋭の軍隊』になるのは不可能だと言わざるを得ません」

 愚かなのはロシア軍の幹部だけではない。プーチン大統領も、少なくとも戦争指導者や最高指揮官としての能力には疑問符が付く。

ロシア・ジョージア戦争の戦訓

 軍事ジャーナリストは「私が注目したいのは、2008年に起きた『ロシア・ジョージア戦争(南オセチア紛争)』です」と言う。

「ジョージア北部に位置する南オセチアはソ連崩壊後、ロシアとジョージアが軍事衝突を繰り返してきた係争地です。そして2008年、ジョージア軍(註:当時はグルジア)は南オセチアに大規模な軍事攻撃を実施します。この時、ロシアはメドヴェージェフ大統領、プーチン首相という“二頭体制”でしたが、実質的な最高権力者はプーチン氏であり、軍の最高指導者も同じでした。プーチン首相は最強の空挺部隊をジョージア西部に進出させ、激戦を繰り広げます。一応、ロシアは勝利したことになっており、プーチン首相は欧米のジャーナリストとの会見で『ロシア軍は首都トビリシから15キロの地点まで進出していた。トビリシを占領するのに4時間あれば十分だった。しかし、それは我々の目的ではなかった』と豪語しました。ところが実際はそれほど圧勝していたのではないことが分かっています」

 実はロシア・ジョージア戦争こそ、ロシア軍が“現代化”できる最大のチャンスだったと言われている。ところが、プーチン大統領は千載一遇のチャンスを逃してしまう。

次ページ:「新しい外観」改革

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。