圧倒的な軍事力を持つロシアはなぜ“4年半が経っても勝てない”のか…プーチン大統領が潰した「軍改革」千載一遇のチャンス
「新しい外観」改革
「まず小国であるジョージアの空軍にロシア空軍は手を焼いています。結果、航空優勢を確立できませんでした。さらに通信整備が時代遅れのもので、戦場で役に立っていません。相変わらず兵站はひどく、軍事車両の故障が続出し、補給は滞りました。結果として部隊同士の連携が不充分なものとなり、孤立した兵士が続出したのです。こうしてロシア・ジョージア戦争を改めて振り返ると、ウクライナ侵攻作戦と全く同じ問題点が続出していたことが分かります」
ロシア・ジョージア戦争の戦訓がウクライナ侵攻作戦に全く活かされなかった。先に「プーチン大統領は千載一遇のチャンスを逃した」と書いた理由だが、実はもう少し事情は複雑だ。軍の改革に乗り出した政治家が存在したのだ。
「プーチンの右腕と呼ばれたアナトーリー・セルジュコフ氏は2007年、国防相に任命されます。そしてロシア・ジョージア戦争を経験し、ロシア軍が時代から取り残されていることを痛感します。ただちに彼は改革に乗り出し、それは“新しい外観(New Look)”と呼ばれました。まずセルジュコフ国防相は思い切って兵力を削減します。問題の多い兵站は民営化し、従来のように国家総動員体制で大軍を編成するのではなく、小規模でも精鋭の軍をいつでも機動的に動かせるようにしたのです。ジョージア戦争で浮き彫りになった兵器や装備の老朽化にも着手しました」(同・軍事ジャーナリスト)
セルジュコフ国防相の失脚
ところが、である。ロシア軍を強くするための改革であったにもかかわらず、軍の幹部が猛反発したのだ。
「国防省傘下の企業に横領事件が発覚し、セルジュコフ国防相は監督責任を追及され、実質的に解任されました。欧米の専門家などは『横領事件そのものは、でっち上げではなく、実際に起きた可能性が高い。一方で“新しい外観”改革で既得権益を失った軍幹部が事件を利用し、セルジュコフ国防相を失脚させた』と分析しています。プーチン大統領も軍幹部を敵に回すわけにはいかず、自身の“右腕”の命だけは助けたものの、彼が失脚するのを止めることはできませんでした。ロシア・ジョージア戦争で浮かび上がった欠陥は、ウクライナ侵攻作戦で浮かび上がった欠陥と全く同じです。そのことをプーチン大統領は誰よりも知っているはずです。ところが彼はウクライナ侵攻を命じ、約50万人と推測される戦死者を出しました。これでは“史上最低の愚将”と批判されても仕方ないのではないでしょうか」(同・軍事ジャーナリスト)
第1回【ロシア軍の“戦死者50万人”は「ベトナム戦争」以来の異常事態…敗戦に学ばない「プーチン大統領」が犯した最大のミス】では、なぜロシア軍はウクライナ侵攻作戦で50万人という史上稀に見る戦死者を出したのか、その理由について詳細に報じている──。
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