“実況アナ”がこだわる「番手」という言葉の意味…競馬中継の「2番手争い」はOKでも、野球中継での「2番手ピッチャー」がどうしても認められない理由

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正しい日本語に固執する

 投手リレーの表現でこの「何番手」がいつ頃から使われているのか、正確にはわかりませんが、私が東海ラジオで新入社員として野球中継の訓練を始めた1991年、ある特別研修がありました。講師はNHKを定年退職され、フリーになられていた土門正夫さん。当時の東海ラジオでは、スポーツアナウンサーの人数が足りないことから、実況をお願いしていたのです。その研修で、私はこう教わりました。

「最近、投手リレーで2番手、3番手という言い方をするアナウンサーが増えてきたが、『何番手』という表現は、ゴールするまで何位になるかわからない競争で使う言葉で、その順番が最初から確定している継投の説明で使うべきではない。『何人目』というのが正しい表現だ」

 ということは、1991年当時には、「何番手」は使われていたようです。

 私自身もそれまでは、野球中継で「何番手」という言葉を聞いても何の疑問も抱いていませんでしたが、土門さんのお話を聞いて妙に納得したのを覚えています。だからこそ、今の野球実況にあふれる「何番手」という表現に違和感を覚えるのです。

 土門さんは戦後まもなくNHKに入局され、1964年の東京オリンピックではテレビやラジオで数々の名実況を残された、NHKのアナウンサーの中でもレジェンドと言われている方です。土門さんは「最近(1991年当時)はNHKでも『何番手』という表現をするアナウンサーがいる。嘆かわしい」ともおっしゃっていました。

 この土門さんのお話を伺って以来、私は継投をお伝えする際「何人目」という表現を使うことに徹しています。

「一生懸命」が市民権を得たのと同じように、「何番手」も多くの人が違和感なく使っているのだから認めればいいという意見の方もいらっしゃると思います。しかし、順番確定前の表現である「何番手」を、順番が確定している投手リレーで使うことは明らかな間違いだと思います。

「何番手」がスポーツアナウンサーの多くが使う表現になった現在、私の考えは時代に逆行するかもしれませんが、一人くらい正しい日本語に固執する頑固者がいてもいいと思っています。

 ……やっぱり、みなさんにはどうでもいい話でしたか?

村上和宏(むらかみ・かずひろ)
フリーアナウンサー。1967年、広島県出身。専修大学法学部卒業後、91年に東海ラジオ放送入社。制作局アナウンサーとして、主にスポーツ実況を担当。2025年の退社まで、プロ野球をメインに多くの番組制作に携わった。現在、バンテリンドームナゴヤのDAZNドラゴンズ戦実況、「プロ野球ニュース」(フジテレビONE)などに出演中。

デイリー新潮編集部

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