生活保護などの世知辛い話題もテーマに 予想外に面白かったアマプラの占い師ドラマ「クロエマ」 

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 配信系のドラマが猛烈な勢いで制作されている。戸田恵梨香主演、超細身の細木数子が泥水すすって裏社会をサバイブする「地獄に堕ちるわよ」(Netflix)も超生臭くて面白かったが、想像を超えてはこなかった。逆に、同じ占い師の話「クロエマ」(Amazon Prime Video)が想定外に染み込んできた。占いとパフェっつう、ゆるっとふわっと甘やかな話かと思いきや「距離感を間違える現代人」の恥と痛みのエピソードでもあり、ハッとする瞬間が多かった。海外でこの微妙な感覚がウケるかは未知数だが、国内では深く響きそうな気がして。

 主人公のエマこと江間宵(エマショウ)を演じるのは杉咲花。エマは恋人も家も仕事も一気に失い、路頭に迷って転がり込んだのが謎の洋館。住んでいるのは資産家のクロエこと黒江神名(クロエカナ)。役名が外国人風味なのもちょっと楽しい。

 多部未華子が演じるクロエは品は良いが、口が悪い。いや、悪くはないか。自分に正直で、空気を読んだり、こびたりしない。傍若無人とはちょっと違う。直球の物言いは誤解を生みやすく、全日本無愛想選手権があったら即優勝レベルだけど。

 逆に、エマは空気を読み、嫌われないよう、不快に思われないよう気を使って生きてきたが、踏みつけられた経験も。自己主張はきっちりする一方、依存したり甘えるのは滅法下手。

 縁は異なもの、クセの強い二人の同居生活が始まるのだが、中和剤として二人の距離を縮めるのがシモンこと下門賢志郎。演じる岩瀬洋志が美形でね。モテ過ぎて逆に生きづらさと苦悩を抱えてきたシモンにぴったり。クロエがオーナーの「純喫茶パリ」で働き、しゃれたパフェを作る名手だ。

 クロエはカードを使った占いが趣味。エマの勧めもあって暇つぶしに商売を始めると、さまざまな悩みを抱えた客が訪れ……という展開。

 一瞬ファンシーな世界観と思うかもしれないが、セリフのやりとりはシニカルだし、生活感や世知辛い世相もちらほら。誰もが受けられる生活保護の権利や、再犯率が高いのは性犯罪より窃盗など、なにげないセリフの中で社会のゆがみや思い込みに触れたりもする。

 占いに訪れる客の悩みを全て解決できないところもいい。むしろ占いそっちのけ、クロエのゲスい野次馬根性による検索&特定が役立つという設定も笑える。

 脇を固めるコンビも盤石。クロエがリフォームを依頼している設計事務所の建築士・大庵理華(ダイアン)と、営業の真秀昇太(マシュー)を演じるのは河井青葉と井之脇海。純喫茶パリの常連客・長州(野添義弘)&半田(諏訪太朗)はなぜか日本人名で、地続きの日常を紡ぐ。

 で、サスペンス要素をけん引するのが桐山漣。クロエが電車内で知り合う謎の男だが、役名が「田中」という肩透かし。リアムとかレオじゃないんか! エマと因縁があるカリスマ占い師・寧山新月(光石研)もネイサンなのに。誹謗中傷の因果応報に遭う客(林田洋平)ですらモーリーなのに。田中。

 不穏な田中が物語を別方向に誘う「クロエマ」全5話、予想外を存分に楽しめたよ。

吉田 潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2026年7月9日号掲載

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