「住宅ローンが上がって大変だ」という報道の落とし穴 金利が上がらなければ物価爆上がりで日本経済も崩壊する
ローン金利ばかり見ていると大局を見失う
利上げには私たちの生活にとって良い面も悪い面もある――。6月16日、日本銀行の金融政策決定会合で、政策金利の0.75%程度から1.0%程度への引き上げが決まると、テレビも新聞も、そう報じることが多かった。とくにテレビは、日銀が金利を引き上げるという観測が高まった時点で、利上げの良い面と悪い面の双方に焦点を当てる報道が目についた。マイナス面としては、とくに住宅ローンの金利上昇が挙げられていた。
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しかし、結論を先に言えば、そんな報道がはびこるから、自分たちが異常な低金利に「苦しめられている」ことに、多くの人が気づかなくなっている。こうした報道は、国民の意識を恐ろしくミスリードしている。
たとえば、ある研究所による次のような試算が報じられる。今回の利上げで2人以上の世帯では、利子収入が増えるプラス面と住宅ローンの利払いが増えるマイナス面を差し引いて、全体では平均で年間2万円程度のプラスになる。しかし、世代別に見ると、住宅ローンの利用が多い20代および30代の世帯では1万4,000円から2万1,000円のマイナスになり、金融資産が多くその利息が増える60代の世帯では、3万8,000円のプラスになる。
この試算が間違っているのではない。利上げによる物価等への影響を加味せずに計算すれば、こうした数字になり、それを弾き出すことには意味がある。だが、そもそも今回の利上げは、物価上昇リスクを抑えるために行われた。だからメディアは、利上げによって物価がどのくらい抑制されるのか、という試算も同時に示さないと、視聴者および読者は誤解してしまう。
つまり、金利の引き上げに物価の上昇を抑える効果があれば、住宅ローン金利が上がった分など、すぐに埋め合わされるのである。だが、物価のことに触れないままでは、負担が増えると指摘された20代や30代は、「利上げは自分たちにはマイナス効果しかない」「利上げされては困る」と思い込んでしまうだろう。
現在、賃金の上昇を上回るペースで物価が上昇しているのは、周知の事実であり、とどまることのない物価の高騰に対し、国民は悲鳴を上げている。物価の抑制は国民の悲願のはずである。そこに結びつけて考えないと、利上げの意味と価値を誤解してしまう。
日本の金利が低いから物価が高騰する
簡単にいうと、金利が上がればモノやサービスを買おうとする動きが鈍り、企業の設備投資への意欲も減る。このため市場に出回るお金の量が減って、事業者は価格を上げにくくなり、物価の上昇が抑えられる。日銀が「物価の番人」といわれるのは、このように政策金利を機敏に上げたり下げたりして、物価を安定させるからである(現実に「番人」を務められているかどうかは別の話として)。
加えて現在の状況下では、政策金利の引き上げは、いま述べたのとは別の方向からも物価の抑制につながる。異常な円安がずっと続いているが、その最大の原因が、日本と欧米諸国との金利差にあるからだ。
どういうことかというと、投資家は金利が高い通貨を保有したがる。そのほうが金利収入は多くなるからだ。日米の金利差が開いて、ドルの金利に対して円の金利が低ければ、ドルを保有するメリットのほうが高いので、円が売られてドルが買われる。さらには「キャリー取引」も行われる。金利が低い円を借り、それを金利が高いドルに交換して運用する取引のことで、日米の金利差が大きいほど行われ、大量の円売りドル買いにつながる。
日米、そして日欧の金利差が一挙に広がったのは、コロナ禍の収束後だった。急激なインフレを抑制する目的で、アメリカは2022年3月以降、ヨーロッパは同年7月以降、急速に利上げした。ところが、日本だけはアベノミクスにはじまった異次元緩和の継続にこだわって、まったく利上げしなかった。こうして金利差が急拡大した挙句、異常なまでの円安に見舞われることになった。
そしてこの円安こそが、現在の激しい物価高騰の主因である。なにしろ、日本の食糧自給率は38%(カロリーベース)にすぎない。G7の平均は100%を超えると推計され、日本は群を抜いて低い。また、エネルギー自給率は15~16%で、これもG7のみならずOECD加盟38カ国中でも最低水準である。
日本は世界でも例外的な水準で輸入に頼っているのだから、円が安ければ食料も、エネルギーも、原材料もみな高くなって、必然的に物価が高騰する。また、食料の38%に関しては円安の影響がないと思ったら大間違いで、たとえば野菜なら、肥料の9割は輸入されており、ハウス栽培なら資材やその原料の多くを輸入に頼っている。運送のためのエネルギーも同様である。つまり円安が解消しないかぎり、日本の物価高が収まることはありえない。
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