1日100本の「中傷動画」で選挙は動くのか……ショート動画の拡散アルゴリズムが語る“疑惑の深層”

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 いまだ鎮火の兆しを見せない「中傷動画」疑惑。高市首相の陣営はライバル候補を対象に1日100本~200本の動画を作成・拡散したと報じられるが、誹謗中傷への問題意識とともに疑惑の根幹をなすのは中傷動画の影響度だ。果たして、ネット空間での「工作」は本当に選挙結果を左右し得るのか。その拡散メカニズムから考える。

※新潮QUEで配信中【高市「中傷動画」で世論操作はできるのか――ショート動画の拡散アルゴリズムから考察する】を再編集した記事です。

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 昨秋の自民党総裁選や今年2月の衆院選において、高市早苗首相の陣営が、ライバル候補や他党を誹謗中傷する動画を作成し、その制作をある男性に依頼していたという週刊文春の報道が話題になっている。

 もともと文春は4月からこの問題を追及してきたが、当初はマスメディアやSNSを中心とするデジタル空間での反響は限定的だった。ところが、6月に入り、高市首相が国会答弁でこの男性について「私も秘書も知らない人である」と述べ、会議の存在自体を否定した。さらに、証拠とされる会議音声についても「違和感がある」などと述べたことで、かえって問題への注目を集めることとなった。

 加えて6月7日には、共同通信が、動画を作成していたとされる男性へのメッセージ送信先が高市首相の秘書の電話番号であることを確認したと報じた。こうした状況証拠が相次いで出てくるなかで、当初高市首相は「面識」自体を繰り返し強く否定したことから、国会で虚偽答弁をしたのではないかとの批判が強まっている。

 この問題の背景には、ネット上の誹謗中傷をめぐる政治家の問題意識の強さがある。特に野党、とりわけ中道改革連合や立憲民主党の議員がこの問題を厳しく追及している背景には、自らがネット上の誹謗中傷の直接的な被害者であるという意識がありそうだ。

「中傷動画」で世論は動かせるのか

 では、中傷動画の大量投稿によって、実際に世論は動かせるのだろうか。

 報道によれば、件の動画作成者の男性は昨秋の自民党総裁選では、高市首相と同様に有力候補と目されていた小泉進次郎氏や、勢いを増していた林芳正氏を主なターゲットにし、彼らを批評する内容のショート動画を1000本から1500本程度作成したという。同様の手法で、2026年衆院選においても、主に中道改革連合の候補などをターゲットにして、1日に100本から200本程度の動画を制作し拡散したという。

 このように、「質より量」で大量のコンテンツを作成・投稿していくこと自体は、ネットでは古くからある手法だ。掲示板に大量に書き込んで議論の流れを変えたり、X(旧Twitter)で大量に投稿してトレンド、すなわち注目されているキーワードを操作したりする手口も、その延長線上にある。

 それでも、動画制作で同じように「量」を重視するアプローチを取るには、従来は極めて高いコストがかかった。台本を作り、素材を集め、編集し、字幕を付け、投稿する。これを数百本、数千本単位で行うには、相当な人手と時間が必要だった。ところが、生成AIの進化によって、編集や生成にかかるコストは劇的に下がっている。この男性に限らず、同様の「切り抜き職人」のような人々が、政治分野にも大勢生まれていると見たほうが自然だろう。

 尤も、動画は作りっぱなしでは広がらない。そこで男性は、約300個のアカウントをXなどで用意し、20台のスマートフォンを使ってAIで自動化しながら、それらの動画を大量に投稿・拡散したという。こうした手法の説明は、実際に実行されたのかどうかは別として、手順を踏めば他者でも再現可能なものであり、大きな違和感はない。

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