大女優なのに笑われることを受け入れた 唯一無二のバラエティタレント、中村玉緒さんが愛された理由

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

明るく天真爛漫

 6月9日、女優の中村玉緒さんが亡くなった。17日には都内斎場で告別式が営まれ、明石家さんま、和田アキ子、松平健、浅田美代子ら著名人も数多く参列していた。【ラリー遠田/お笑い評論家】

 ***

 中村さんは映画全盛期の大映を支えた本格派女優だが、多くの人の記憶に残っているのは、明石家さんまとの共演をはじめとするバラエティ番組での明るく天真爛漫な姿である。

 上品な京都弁で話し、豪快に笑い、ときには周囲の予想を軽々と超えるとぼけた発言をする。その飾らない雰囲気が多くの人に愛されていた。

 中村さんは、二代目中村鴈治郎を父に、四代目坂田藤十郎を兄に持つ芸能一家に生まれた。10代で映画界に入り、市川雷蔵や長谷川一夫が活躍した大映のスターシステムの中で、数多くの時代劇や文芸映画に出演した。つまり、もともとはバラエティ番組で笑われることを仕事にしてきた人ではない。演技力と品格を備えた、映画史に名を残す正統派の女優だった。

 さらに、私生活では勝新太郎の妻としても知られていた。天才俳優である一方、常識では測れない豪快さを持つ勝を長年支え、さまざまな騒動にも向き合ってきた。その人生は、テレビで見せていた朗らかな表情からは想像できないほど波瀾に満ちていた。

 しかし、中村さんは苦労を前面に押し出そうとはしなかった。夫について語るときも、被害者として恨み言を並べるのではなく、その規格外の人間性をどこか楽しそうに語った。ここに彼女が愛された理由の核心がある。

 中村さんがバラエティで本格的に注目されたのは、明石家さんまとの共演がきっかけである。さんまは、俳優や文化人や一般人が意図せず見せるおかしさを発見し、それをテレビ向けのキャラクターとして定着させることに長けた人物である。彼女の話が思わぬ方向へ脱線したり、質問とは少しズレた答えを返したりすると、さんまは即座に反応して、そのズレを笑いへと変えていった。

次ページ:したたかさと強さ

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。