大詰めを迎えた「再審制度」改正法案…冤罪被害者の救済と共に問われる“確定から平均16年間執行されない”死刑のあるべき姿

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「神様ではなく人間が作った法律。改正できないことはない」

 袴田事件で再審無罪が確定した、袴田巌さん(90)の姉・ひで子さん(93)が今月9日、再審制度見直し法案を審議している国会でこう訴えた。再審請求中に死刑が執行され、弁護権を侵害されたとして、元死刑囚の弁護士3人が国に賠償を求めた裁判の控訴審では、大阪高裁が原告側の訴えを棄却した。一方、大阪教育大附属池田小学校(大阪府池田市)で児童8人が殺害された事件や秋葉原無差別殺傷事件など、記憶に新しい死刑判決事件もある。無実の者が死刑になることは本当にないのか、死刑執行はどうあるべきかが今、問われている。

スピード執行を要望

 1966年、静岡県清水市(現・静岡市清水区)で一家4人が殺害され、同年に袴田巌さんが逮捕された、いわゆる袴田事件は、80年に最高裁で死刑が確定。2014年の再審開始決定に対して検察側が抗告し、無罪が確定したのは逮捕から58年後の2024年だった。

 国会で審議中の再審法見直しの政府案では、再審開始決定に対する検察官の不服申し立て(抗告)を原則禁止としつつ「十分な根拠」がある場合は例外的に抗告を認めている。衆院法務委員会に参考人として出席した秀子さんは、袴田さんが拘置所で死刑執行を待つ日々の中で精神をむしばまれたとして「(無罪確定に)なんでこんなに時間がかかるのでしょう」と訴えた上で「(法に)抜け道を作っている」と、政府の刑事訴訟法改正案を批判した。

 5月13日に大阪高裁であった判決公判は、強盗殺人罪などで2004年に死刑が確定した元暴力団幹部の岡本(旧姓・河村)啓三元死刑囚が再審請求した際、弁護人を務めていた原告の3人が提訴していたもの。元死刑囚が第4次再審請求中だった2018年12月に死刑が執行されたのは「裁判を受ける権利を保障する憲法32条に違反する」との主張が退けられたのだ。

 確定判決によると、元死刑囚は1988年1月、相場師で投資顧問会社「コスモ・リサーチ」(大阪市)社長だった見学和雄さん(当時43)を、共犯とともに拉致して1億円を奪い、隠蔽するため見学さんと同社従業員の男性(同23)を大阪市内のマンションで絞殺。遺体をコンクリート詰めにし、山林に埋めて遺棄していた。

 冤罪の危険性から死刑執行への慎重な意見がある一方、死刑囚自身がスピード執行を求めるケースもある。平成史に残る凶悪事件となった池田小殺傷事件がそれだ。2001年6月8日の朝、包丁2本を隠し持った宅間守元死刑囚(当時37)が校内に侵入。校舎1階の教室や廊下で児童らを次々に襲い、2年の女子児童7人と、1年の男子児童1人が死亡。児童13人と教諭2人が重軽傷を負ったものだ。

 現行犯逮捕された宅間元死刑囚は、大阪地裁で2003年に死刑判決が言い渡され、翌04年に刑の確定から1年足らずで死刑が執行されている。元死刑囚は自ら控訴を取り下げ、主任弁護士への手紙で「6か月以内、出来れば3か月以内の死刑執行を望みます」と記していた。刑事訴訟法第475条2項では、死刑の執行命令は判決確定の日から「6か月以内に行わなければならない」と規定している。だが、実際には平成以降の執行までの平均年月は確定から7年9か月で、現在の死刑囚は平均で16年間、執行されないままだ。

 事件から25年目となった今年の追悼式典には、遺族のほか全校児童600人や教員、来賓ら計760人が出席。6年生3人が児童を代表して「自分たちが安全・安心に包まれた社会を担う存在になっていく」と誓いの言葉を述べている。

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