刃の欠けた「草刈り鎌」が次々と……実家がゴミ屋敷と化した「国家公務員」が抱える“認知の歪み”とは
ゴミ屋敷を認識できない国家公務員
「ちょっと物が多いのですが、どうぞ上がってください」
Aさんは私たちにそう言って、自然な口調で室内に入ることを促した。しかし、「ちょっと物が多い」レベルではない。玄関入ってすぐ、これはかなりのレベルのゴミ屋敷だと感じた。室内に足を踏み入れると、すさまじい物の量でうまく歩けない。どこかに手をつこうとすると、そこら中にある山積みの物の雪崩が起きてしまう。私はよろよろしながら前に進んだ。Aさんがそんな私を振り返った。
「母は80代でしたが、ここに一人で住んでいて、転ばずに歩いていたんですよ」と、胸を張って言う。いやそこは自慢できるところではないだろう、と内心思いつつも「すごいですね」という言葉が口をついて出た。Aさんが微笑む。外見は、全く普通の会社員に見える。Aさんを紹介した医師からも「大学卒業後から30年、国家公務員として勤務し、職場からの信頼は厚い」と聞いていた。
でも、「この家が恥ずかしい」という気持ちはないのだろうか。彼の心情がわからなかった。Aさんは、この家をゴミ屋敷と認識していないのだ。
あんしんネットの作業員が見積もりをし、2階建てのこの家の物を撤去するのに、1階だけで60万円という額が算出された。Aさんは「そんなには払えない」と言う。そこで「2トンロングトラックに処分する物がいっぱいになるまで詰める」という作業を2回、行うことになった。2トンロングトラックといえば、一般的に家族3人分程度の荷物が入る大きさである。
2日間作業を行い、処分費用は2回でおよそ30万円。それでも1階にある物の半分も処分できなかったが、一旦これで作業は終了となった。
以上、ここまでは2年前の話で、その後Aさんと連絡をとることはなかった。
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