“おばあちゃんの趣味”にZ世代が夢中…夏でも「編み物」ブーム 針と糸が変えた令和ならではの納得事情

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糸のビジュアルから入るのが令和

 こうしたブームを受けて、毛糸業界もにわかに活況を取り戻している。

「毛糸メーカーの展示会に足を運ぶと、かつては閑古鳥が鳴いていることもあったのですが、現在は大盛況。メーカーによっては、冬はおろか夏でも在庫が足りないという状況が続いているそうです」(入江さん)

 夏を迎えても編み物人気が衰えない背景には、主役である「糸」の劇的な進化も一役買っている。

「実は韓国でも空前の編み物ブームが起こっていて、とにかく見た目が可愛い韓国や中国産の糸が多く流通するようになりました。昔ながらのウールだけでなく、カラフルなアクリルやラメ、モヘアなどの化繊、夏場でも爽やかに扱えるコットンなどが、100円ショップやスリコなどで手軽に揃うのも、編み物ブームの追い風です。昔は編みたいものに合わせて糸を買うのが普通でしたが、現在ではまず糸に一目惚れして買い、それを写真に撮ってSNSに上げる。さて、これで何を作ろうか……と、糸ありきで順番が逆転しているケースも珍しくないんです」(池田編集長、以下同)

 これから夏にかけて季節に池田編集長がオススメする糸はコットン糸。ペットボトル、たまごっち、イヤホンケース……身の回りの小物のためのニットアイテムが若い層に受けているそう。糸と同様、「くすみカラーのかぎ針」などファッショナブルなキットも100円ショップで取り扱っており、“おしゃれだから持ちたい”といった「形から入る派」も増えているようだ。

学びの場はYouTube。名だたる芸能人も虜に

 また、学びの場もかつてとは様変わりしている。

「今は、ほとんどの方が本(編み図)ではなく、YouTubeなどの動画を参考に、流し撮りされた手元の動画を見て、そのまま真似して編んでいます。動画で手軽に始めて、さらに上級のテクニックを追求したくなった層が、改めて専門の書籍や雑誌を手に取るという流れになっているようです」

 これほどまでに多くの人が編み物にハマる背景には、現代人ならではの事情があるようだ。手先を規則的に動かす編み物の作業が、余計なことを考えずに済む「マインドフルネス」の状態を作り出すといわれている。

「現代人は、スマホやパソコンで常に脳を酷使しています。特にZ世代などは、物心ついた頃からデジタルに囲まれて育っているため、無意識に『スマホ疲れ』を抱えがち。彼らにとって、手先を動かす編み物は格好の“デジタルデトックス”でありストレス解消になっているのだと思います」

 恩恵は単なるリフレッシュにとどまらない。

「編み物は幾何学的な要素や、パズルを解くような感覚もあります。そのため“女性だけの趣味”と捉えてしまうのはもったいない。手の運動と脳の活性化を同時に行う手芸は、近年脳トレ効果もあるといわれ注目されています。年齢や性別を問わず、大人のストレス解消やシニア世代の認知症予防、ビジネスパーソンの手軽な趣味として、もっと広がってほしいですね」

 老若男女にオススメできる《賢明な趣味》だろう。

「作家さんによるワークショップや初心者向けの教室、オンラインでの編み会なども盛んに開催されています。年齢も性別も、社会的な肩書も一切関係なく、ただ『好き』という同じ趣味の仲間と集う時間はとても楽しいものです」(入江さん)

 高価な道具もいらない。まずはかぎ針1本と数百円の毛糸をそろえ、動画を検索して、この週末から手軽にスタートしてみてはいかがだろうか。

取材・文/荒木睦美

デイリー新潮編集部

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