埼玉「ケアマネ殺人」であぶり出された「在宅介護」の闇 3割がカスハラ被害「太ももを触られた」「土下座を強要された」
「土下座をしろ」
まず驚くのは、過去1年間にカスハラを受けたと感じたケアマネが33・7%もいたことだ。そして「誰からカスハラを受けたか」という複数回答のアンケートでは、「利用者本人」と答えたのは44・3%で、「利用者の主介護者やキーパーソン」が71・8%と圧倒的だった。
報告書にはカスハラの実態もまとめられている。その一部を抜粋しよう。
《耳が遠い方が多く、耳元で話して欲しいと傍に行くと太腿を手で触られたり、「夜が眠れんけ一緒に寝てくれ」等と言われることは日常茶飯事》
ケアマネには気の毒だが、これなどはまだ可愛いほうだ。ホームヘルパー(訪問介護員)などからの相談を受けるのもケマネの役割だ。中にはこんな相談もある。
《買い物代行のための1時間のなかで、自分の話をされるので、買い物ができない。いざ、買い物に行ってくれば、買い直しをさせられる》(追補版より)
まるで召使いのようにこき使う利用者もいるのだ。だが、その家族となるとさらにタチが悪い。
《サービスの調整段階で、希望する日時の調整ができず、代替案をお出ししているところで「私たちはこれだけ忙しいのに介護支援専門員は何をやっているのよ」と言われた。最初は、ご子息の配偶者(義娘)から勢いよく話をされたため、申し訳ない、万全ではないということをお伝えしていたが、代替案等を話しているうちに、ご子息からは一時間以上怒鳴られ、「土下座をしろ」という話になった。土下座はできませんとお答えして帰ってきたが、次の訪問時に心の負担になった》(追補版より)
思い当たる節のある人はいないだろうか。エピソードはさらに続く。
「証人になってほしい」
《個人的には、利用者自身よりもキーパーソンやその他の親族からのハラスメントが多いと感じる。一番辛い思いをするのは、金銭や財産問題が絡んだ時に特に感じる、利用者が亡くなった後にも家族が相続問題で揉め始めると、キーパーソンを含めてそれぞれの親族が、電話をかけてきては、いろいろ聞いてきたり、自分の方が介護をしていたとか言い始めて、裁判をするので証人になってほしいなど言ってくるケースが何度かあった。こんなことに対応をしていたらとても仕事にならない》
利用者の死後に家族のケアまでしなければならない。ケアマネの苦しみは次の一文からわかる。
《エピソード自体をあまり思い出したくありません》
状況は深刻だ。さらに、食事や排泄の世話、着替え、洗濯、買い物などを行うホームヘルパー(訪問介護員)は利用者宅への訪問頻度も多い。全国ホームヘルパー協議会に聞くと、
「川口市の事件はたまたまケアマネの方が襲われただけで、ホームヘルパーが襲われた可能性も否定できません。ヘルパーが訪問介護を行う際は、実質的に密室状態と言えます。今回のような事件を予防するためには“単独では行かない”ということくらいしか思い当たりませんが、そうなると倍の人員が必要になります。ヘルパーの確保ですら難しい今、現実的な策とは言えません……」
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