トクリュウの実行犯は「担い手不足」で4割が10代の少年… 「SNSでの募集が難しくなり、ねずみ講式の人集めにシフト」
捜査班「T3」は何をしている?
だが、警察も手をこまねいているばかりではない。昨年10月、警視庁は「匿名・流動型犯罪グループ対策本部」を発足、専従捜査班「T3(Tokuryu-target Torishimari Team)」を立ち上げたのである。
実行犯や指示役、手配師などトクリュウに関係する人物は全国でつながっている。そこで「T3」には北海道から沖縄まで全国の道府県警察本部から、総勢200人前後の捜査員が集められたのだ。
具体的に何をしているのか。さる捜査幹部が言う。
「T3は現場での聞き込みよりも、上がって来た情報を解析することに力点を置いています。AIのようなシステムに情報を入れて分析するイメージですかね。SNS上の闇バイト募集や、捕まった容疑者、協力者などから得た情報を基に、誰と誰がつながっているなどのチャート図を作成して組織の実態を明らかにしていく。その中に少年がいれば少年事件課、外国人絡みなら国際犯罪対策課など、各部署に情報を落とし、協力して捜査を行っています」
栃木のケース同様、10代の少年が実行役として関わっていたトクリュウ型事件といえば、22年から23年にかけ全国で頻発した「ルフィ広域強盗事件」、23年に東京・銀座で発生した「高級時計店強盗事件」が記憶に新しい。
4割近くが10代の少年
昨年だけで、トクリュウ絡みの事件で逮捕された者は約1万2000人にも及ぶ。そのうち4割近くを10代の少年が占めるのだ。
背景には、ウェブ上で広く闇バイトを募集して、大勢の実行犯を集めるのが難しくなっていることがあるという。
「昨年1月に導入された『仮装身分捜査』という手法がトクリュウの中で浸透して、警戒されているのかもしれません」
とは、この手法の制度設計に携わった元警察庁サイバー捜査課長の棚瀬誠氏だ。
「捜査員が架空の人物の身分証を使用して、闇バイトに応募することで実行犯の中に紛れ込みます。コンビニ前など指定された集合場所に出向き、実行部隊に身分を明かして犯行を未然に防ぐ。また実際にホームセンターなどで凶器やガムテープ、縄などを実行犯が購入すれば『強盗予備罪』で逮捕することもあります」
「担い手不足」
トクリュウ側からすると、SNSなどで募集をかければ、捜査員が応募してくるリスクが生じているのだ。
「警察を警戒して、SNSでは短期間しか募集をかけられないので大人数は集まらない。そうなれば、人づてに仲間を集めるしかない。そのため実行犯を一人確保したら、何人か連れてくれば報酬を上げてやるとインセンティブをちらつかせて、ネズミ講のような人集めにシフトしつつあるのではないでしょうか」(棚瀬氏)
前出の藤原氏によれば、
「トクリュウと呼ばれる犯罪形態が生まれて10年近くになり、多くの実行犯が検挙されたり、ある程度まで稼いで足を洗う者が増えて担い手不足に陥っているのだと思います。今回の栃木の事件では、竹前容疑者が知人の少年にメンバー集めを依頼。従来のトクリュウと異なり、皆が顔見知りでどこかでつながっていたため、芋づる式に夫妻まで逮捕されたのでしょう」
後編では、栃木の強盗殺人の実行犯、指示役の量刑がどのようになる可能性が高いのか、専門家に聞く。
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