恋人の「姪」の顔を見て、ひっくり返るほど驚いた…結婚もハメられた? それでも41歳夫が夫婦でいることにしがみつくワケ

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そんなことってある?ハメられた?

 1ヶ月ほどたったころ、彼が帰ると千瑛さんが床に座り込んでいた。

「どうしたのと言ったら、生理が来たと。妊娠していたんじゃなかったのと聞くと、『私の勘違いだった』と。医者に行ったはずじゃなかったっけと思ったけど、彼女は病院で妊娠が確定したとは言ってなかった。もともと生理不順だったため、てっきり妊娠だと勘違いしたのだというわけです。そんなことってあります? もしそうだとしても、一応、病院に行って確認しません? 僕は意図的に嘘をついたとは思いたくない、もともと千瑛は結婚に乗り気ではなかったのだし。だけど、結果的には嘘をついたわけですよね。しかも男がそう言われたら、どうにも逃げようがない決定打ですよ。僕がずっと黙っていると、『私はどうしても結婚したいわけじゃなかった、むしろ恋人関係のままでいたかった。でもなんだか結婚の方向に話が進んでいった。そんなとき生理が遅れて、妊娠だと思い込んじゃったの』と釈明していましたが、なんとも不可解でした」

 残ったのは、後味の悪さだけだ。1ヶ月間、彼は多忙な仕事をやりくりして、朝から妻のためにお弁当を作り、夕飯の下ごしらえをした。帰宅するとすぐ夕飯を作り、夜中に洗濯や掃除もした。週末はお風呂やトイレの掃除、とにかく妻が快適に過ごせるよう、ひたすら努力を続けたのだ。千瑛さんは、それを見ながら妊娠していない可能性を考えはしなかったのだろうか。

「きみとなら快適な生活が送れると思ったのに。僕は思わずそう言っていました。これからよ、これからは私ががんばるからと千瑛は叫ぶように言っていた。本当に勘違いなの、勘違いも許されないの? そう言われたら何も返せない」

 自分の努力がムダだったことへの怒りなのか、子どもができたと聞いてこれからの展望が急に開けたような気になったのに、それを裏切られた感覚なのか、あるいは生きるよすがとなるはずの子どもが「勘違いだった」と片づけられた絶望なのか、ともあれ、浩太郎さんの無力感は相当なものだったようだ。

夫婦は続けているけれど…「どちらかが浮気しちゃいそう」

 今も浩太郎さんは千瑛さんと同居はしている。だが、あれからやはりしっくりとはいかなくなった。お互いに遠慮しながら、人前では「とりあえず仲のいい夫婦」を演じていることもある。義両親には、もともと妊娠の件は伝えていなかったのだが、先日、義父に「大丈夫?」と聞かれた。浩太郎さんは泣きそうになったという。

「自分が離婚したいのかどうかも、わからないんです。千瑛を憎んでいるわけではないし、いつか由布子さんが帰ってきたら迎えて謝罪したい気持ちもある。結婚はしなくていいという自分の信念みたいなものに反して結婚を決めたのだから、もう少しこの道にしがみついていたいような未練もある。千瑛への未練ではなく、自分の選択と決断に対する未練。でもそんなものにしがみついても、人生が開けるわけでもないとわかってる」

 あれからまったく性的な関係をもっていないので、千瑛さんが本当に妊娠することはない。千瑛さんから誘ってくることもない。

「どちらかが浮気しちゃいそうな気もしています。そうなったときに、僕らの本当の気持ちが浮かび上がってくるのかもしれません。そうならないと本心が見えないのも、情けない話だと思いますが……」

 少し不可思議な、少し歪んだ夫婦関係は、今日もひっそりと続いている。

 ***

 千瑛さんとの関係に踏みとどまりながら、自分の選択への未練を手放せずにいる浩太郎さん。記事前編では、結婚を避けてきた彼が、先輩の妻との不倫関係、母の知られざる横顔を経て、千瑛さんに出会うまでを紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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