ベテラン歌手の自宅が「中国製バッテリー爆発」で全焼 被害は4,500万円だけじゃない…本人が語る喪失と“ネット通販の闇”
真の闇深さ
自分の被った被害を周知しようと、販売していたAmazonに「爆発事故の原因となった同型製品」購入者への注意喚起を何度も求めたが、ただ「購入代金1万4,499円の返金」とする回答が繰り返されただけだったという。
「Amazonには1月から2月にかけて10回の連絡を試みています。はじめは“小売店なのでAmazonでできることはありません”という対応で、そのうちに一方的な自動送信のメールのみの対応となり、最後は代理店のメールアドレスのみ機械的に、返信できないアドレスから送られてきました。最終的に私がバッテリーの危険性を消費生活センターに訴え、消費者庁に報告してもらったところ、その日のうちに突然、Amazonから一斉に、該当のブランドの商品が消えました」
損害賠償も考え、メーカーや代理店への連絡も試みたが、Amazonに記載のあった電話番号はつながらず、Amazonが伝えてきた「代理店のメールアドレス」も架空のもので叶わず、泣き寝入りするしかなかった。
「わが家では、燃えた家の中のものの総額が約2,000万円、リフォーム費用で約2,500万円かかる損害がありました。心の傷は残りましたが、思い出の品は戻ってきません」
命には代えられないものの、計4,500万円以上の重すぎる金額が吹き飛んだ。
「でもそれより“同じバッテリーを今も使っている人がいるかもしれない”という恐怖のほうが何倍も苦しかったですね」
ZOOCO さんが国民生活センターなどに問い合わせると、Amazonでの購入品による事故はZOOCOさんのケースに限らず、死亡事故も起きており、手続きの複雑さや精神的疲弊からやはり泣き寝入りするケースが多いことを知らされた。
「誰も責任を取らない。でもその間にも、被害に遭う人がいる。これをなんとかして食い止めたい。私にできることは危険を伝えて注意喚起を促すことだけ」
ZOOCOさんが今、伝えたいことはとてもシンプルだ。
「皆さんの身の回りにある充電式製品を、少し見直してほしい」
東京消防庁は、リチウムイオン電池搭載製品の火災を防ぐために次のことを呼びかけている。取扱説明書の確認、純正充電器・純正バッテリーの使用、膨らみや充電不良などの異常が出たら即使用中止、そして購入する際には製造事業者の連絡先が明記された製品を選ぶこと。特にネット通販で購入した格安品には、PSEマーク(電気用品安全法の適合証明)の有無を確認する習慣が求められる。
「キャンプやアウトドアで使う大型バッテリー、モバイルバッテリー、電動アシスト自転車、コードレス掃除機——普通にご家庭にあるものが自然発火して火災を引き起こしています。消費者庁のサイトには信じられないくらい多くの事例があります」
新しい一歩を
「あわただしい12月に近所にも仕事先にも多大なご迷惑をかけてしまったし、私も家族も心身に不調をきたした。何をどう気を付ければよかったのか、ずっと自分を責め続けました」
だが、同じマンションの住人らは一家を責めることもなく、温かい食事や差し入れを届けてくれた。年末年始だというのに、休み返上でライフラインの設備に尽力してくれた業者もいた。
「たくさんの方に支えていただきました。やはり生きていてよかった」
娘が落ち着くのを待ち、デビュー32周年の4月21日に、ZOOCOさんは被災をブログで公表した。同時に、ストレスによる突発性難聴——両耳の一定音域(4KHz前後)の聴力を失ったことも明かした。自身のことを後まわしにしながら復旧作業と娘のケアに奔走するうちに、治療の機会を逃し、娘との会話が聞こえづらいことで発覚したという。
歌手として致命的ともいえる打撃。それでも彼女は「聴こえる倍音でハモるトレーニング」を始めている。4月には虹の写真とともに、ブログにこう綴った。
《俯いてばかりだったら見えない景色だね》
デビュー32周年のライブは中止になり、32年間支えてくれたファンに説明もできないまま、活動休止を告げた。それでも今、少しずつ歌への道を歩き始めている。






















