父の棺の前で母の不貞の真相を知り「最低な血」を自覚。既婚女性ばかり求める42歳男性の孤独

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誰にとっても1番にはなれない

 それ以来、彼は既婚女性とつきあうようになっていった。独身だと結婚という話題が出てくるが、相手が既婚なら結婚を考えずにすむ。自分は結婚などしてもうまくいくわけがないのだから、ひとりで生きていくのが合っている。いつしか彼はそう思うようになっていた。

「既婚女性で寂しそうな人を放っておけないときもあるんですが、いずれにしても親の影響があるんでしょうね。僕としては、親とは関係ないと思いたいけど、こんなふうに僕が歪んだのは親のせいだと思いたいところもある。離婚などする気のない既婚女性とつきあうのは気が楽だけど、あるとき気づいたんです。結局、僕は誰にとっても1番にはなれないんだなって。既婚女性の中には『夫のことは好きじゃないけど別れるつもりもない。私がいちばん愛しているのはあなただけどね』と言ってくれる人もいた。でもそう言う人だって、『明日は夫が早く帰ってくるというから会えない』と夫を優先させる。愛と優先させる順番とは別ものなのかと思ったことがあって。僕は最優先される立場になったことがないなと。それは寂しい事実確認でした」

 結婚する気がないのか結婚できないのか、誰とも人間的な関係を育む能力がないのか。彼はわからないまま30代を過ぎて、40代に突入した。夫に支配されながら生きた母も鬼籍に入った。人はみな死んでいく。

「今も既婚女性とつきあってはいますけど、僕は彼女に遊ばれているだけだと思う。それでもまったく求められなくなるよりはいいのかなと思ったり」

 かなり強烈な虚無感が彼から漂う。それが生育歴から来るものなのか、彼の人生観によるものなのかはわからない。ただ、彼は生き方を変えたいとは思っていないようだった。

 いつか、誰かに強烈に求められる機会があったら彼はどう対処するのだろう。愛情豊かな人に引っ張られて、彼自身の奥深くに眠っている愛が噴き出してくることもありうるのかもしれない。彼自身が愛情を求めていることに気づいていないだけではないのか。彼の心理はいろいろ想像ができるのだが、そうした想像を簡単に口にすることはできない雰囲気があった。

 姿勢のいい彼が、さらに背筋を伸ばしてしっかりした足取りで去っていく。複雑な思いを抱きながら、その背を見送った。

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 既婚女性との関係を続けながら、「誰にとっても一番になれない」という寂しさを抱えている雄輔さん。記事前編では、彼が育った家庭環境と、「大人」を信じられなくなるまでの少年時代を紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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