父の棺の前で母の不貞の真相を知り「最低な血」を自覚。既婚女性ばかり求める42歳男性の孤独
父の棺の前で知った真相
もうじき大学を卒業するというころ、少し前から闘病していた父が亡くなった。1度くらい見舞いに来てよと母から連絡があったが、彼は帰らなかった。だがさすがに通夜と葬式には出るしかなかった。
「父の腕をねじ上げてから、顔を見るのは初めてでした。どこか毒々しい顔をした父だったけど、命が果てるとただのおじいさんにしか見えなかった。母はホッとしたような顔をしていた。母とふたりきりで通夜を過ごしていたとき、あの日のことを聞いてみたんです。母が叔父と絡んでいたことを。すると母は、父の棺をにらみつけながらずっと黙っていましたけど、ぽつりと『あの人は弟に私を提供したんだよ』って。叔母の具合が悪くて夫婦生活を送れなかったから、父は母を差し出したらしい。でも母を自分の所有物みたいに思っていた父が、どうしてそんなことをしたのかわからない。母は『自分の所有物だからこそ、弟に貸してやって優越感に浸りたかったんじゃないのかな』って。叔父には自分たちの子どもも養女にさせてあげたし、妻も貸してやった。そんなふうに恩を着せていたのかもしれません。僕にはとうてい父の気持ちはわからないし、黙って言うことを聞く母の心理もわからない。でも母は『たまに義弟と関係をもつのも悪くなかったわ』って。なんだか妙にはすっぱな言い方でした。母としては父への復讐みたいな気持ちもあったのかなあ」
ますます「最低な親のもと」で育てられたと雄輔さんは感じた。それでも、そんな「最低な血」が自分の中にもあることを知る。
上司の妻を口説いた理由
「就職した会社で3年ほどたったころ、上司が替わったんです。その人からひどくいじめられて。周りが引くほど、なぜか僕だけが嫌われた。相性が悪かったんですかね。それまでの上司とはうまくやっていたし、大きな声で叱責されるようなミスを犯したわけでもない。ただ、僕の存在が彼を苛立たせてしまっていたみたいで。上司の奥さんも同じ会社だった。だから僕、奥さんに相談しに行ったんです」
上司の妻は非常に温かい人だった。自分に何ができるかわからないけど、それとなく話をしてみると言ってくれた。そして実際、上司からの嫌味やいじめは止まった。それどころか、飲みに誘われ、腹を割って話すことができた。
「僕は彼からみると、ちょっとわかりづらいところがあったようです。言葉が足りないというか。お互いに誤解があったんだとわかって、それ以来、探り合いながらうまくいくようになりました」
お礼と報告を兼ねて、上司の妻を食事に誘った。そして彼はなぜか妻を口説いた。彼女を褒めまくり、女性として素敵だと崇めるような発言を繰り返した。それまでめったに自分から女性を口説いたことなどなかったのに、「まるで使命でもあるかのように」キザで甘い言葉を囁き続けた。
「けっこう簡単に落ちちゃったんです。意外なほどだった。彼女に恋したわけではないけど、なぜか関係をもちたかった。あとから思ったんです。上司とは利害関係もあるから、仲よくやっていくことにしたけど、僕は彼に父親的な支配欲求とか横暴さを見ていたんです、きっと。だから上司に何か復讐したかった。当時、その上司は50代前半。父とは同世代でした」
復讐のために妻を寝取る。それがいいか悪いかはわからないが、彼としては上司本人に対するものより、「父なるものへの復讐」という意味合いが強かったのだ。
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