対処を誤れば、長期休職やうつ病に… ただの風物詩ではない「5月病」の恐ろしさ リスクを抱える人の特徴は?

ドクター新潮 ライフ

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「5月病」シーズンの到来だ。安易に、季節の風物詩と思うなかれ。対処を誤れば、長期休職やうつ病の発症を余儀なくされる。心理学者で官公庁カウンセラーの舟木彩乃氏が説く、5月病の症状と対策とは……。

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 楽しみにしていたゴールデンウイークもあっという間に過ぎ、新年度が始まって1カ月ほどすると、「5月病」の季節がやってきます。5月病は医学的な病名ではありませんが、GW後に、気分の落ち込み、体調不良、眠れない、疲れやすいなどの症状が現れます。

 人間は、強いストレスを受けたり、一定期間ストレスにさらされていると、ストレス反応(ストレスによって心理面や身体面、行動面に生じるさまざまな反応のこと)が出ます。ストレス反応は、心理面に現れるものとしてイライラ感や抑うつ感などがあり、身体面では胃痛や腰痛、行動面では勤怠の乱れや飲酒量増加などとして現れます。

 5月病という現象を理解する上で、日本の「4月始まり」という制度を無視することはできません。明治19年度以降、会計年度や学齢年度の始まりが4月に固定されたことで、日本人のライフサイクルは4月に一斉にリセットされ、5月にその反動がくるようになりました。

 諸外国、特に欧米諸国では、採用や異動は、特定の職務(ジョブ)に欠員(ポスト)が生じたタイミングで随時行われる「ジョブ型」が主流です。近年では、日本でも「ジョブ型」を取り入れる動きがあるものの、依然として職務ではなく組織への帰属(メンバーになること)を前提としている「メンバーシップ型」の雇用慣行が根強いといえます。

 それゆえ、4月には新卒の一括採用や定期人事異動という形で数百万人が同一のタイミングで動き、職場環境を激変させます。この「集団的一斉移動」は、社会全体に「新しい環境に適応しなければならない」という強烈な同調圧力を生み出すことにもなります。

一見喜ばしい出来事もストレスに

 私たちは、日々生起するさまざまな出来事に適応するために、相当な量のエネルギーを使っています。ネガティブな出来事ばかりではなく、ポジティブな出来事も心身には少なからず影響を及ぼします。これらの出来事が与えるストレスを数値化したものの一つに、社会的再適応評価尺度(SRRS)、通称「ライフイベント・ストレス表」(アメリカの精神科医トーマス・ホームズらが作成)があります。

 ライフイベント・ストレス表は、人生の出来事(ライフイベント)のうちストレッサー(ストレスの要因)となる43項目をリスト化して、数値で表したものです。高い点数の出来事ほど心にかかる負担が大きく、最上位(100点)は「配偶者の死」となっています。「妊娠」は40点、「転職」は36点などとなっていて、ストレス診断では、この表を使って1年間に経験したライフイベントの点数を合算します。合計点が高いほど、ストレスの大きな1年だったということになります。

 表を見ると、一見喜ばしい出来事であってもストレスになり得ることが分かります。結婚や出産(第14位)、就職(第16位)などのイベントは、慶事である一方で、環境が大きく変化してしまうからです。ポジティブな変化でも、それに適応しようとすることで、人は相当量のエネルギーを消費し、心身の疲弊となるのです。

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